おにくちゃん

夜明けのすべてのおにくちゃんのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.3
私は男性なのでもちろんPMSは無いし、パニック障害でもない。
そんな自分がそれらと肩を並べて共感の言葉を口にすること自体がちょっとずれているのかもしれない。

夜なかなか寝付けなくてネガティブな感情に支配される。
精神を追い詰められて咄嗟にイライラしてしまう。
全てが嫌になってその場から逃げ出したくなる。
何であんなひどい事を言ってしまったのだろうと後悔する事もある。
ほとんどの人が経験があるのではないか。

それを繰り返すことで自分の居場所が無くなっていく。
共感が欲しい訳ではなく放って欲しいだけなのに。

答えは無いのだが「適度な距離感での支え合い」の大事さは伝わった。
優しい人でありたい。

私も作中に出てくるこんな職場に勤めたい。

オーバーな露出の中、自転車をこぎ出すシーン。
渋川さんが思わず泣き出すシーン。
なんてことのない広角の固定カメラの風景ショット。
電車の音。
エンドロールの背景に流れる長回しのフィックスショット。
全てのシーンに意味があって大切な余白がある。
こんな映画が見たかった。

今年は良作が多い。
この後濱口監督の新作も控えてるし楽しみ。