ハル

夜明けのすべてのハルのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.4
みんな何かの当事者で、
それぞれの「ままならさ」を抱えている。

それが身近でリアルな「ふつうのこと」として描かれていたのがとても好きだった。
自死遺族の集まりに冗談や笑いがあるのも。出てくる学生に外国ルーツらしい子が当たり前にいるのも。

当事者であることはしんどくて、「こうなって良かったことなんて1つもない」と思うのもリアル。
だけど、それだけじゃない。
辛さや苦しさを抱えながらも日々は続くし、笑いもするし、抱えているものを忘れる一瞬だってあるかもしれない。それもまた、外からパッと見ただけではわからないリアルだと思う。
そこまで描く優しさ、真摯さ。


PMSやパニック障害など、いろんなものに名前がついて、ある意味可視化されるようになった今。でもそれに向き合う方法は「セルフケア」に偏っているのかも、とふと思った。彼女が自分でヨガをして、毛布を持ち込んで体を温めるように、私も観ながらついつい「自分でできる解決策」を探してしまっていた。
 だから山添くんと藤沢さんのように、自分でどうにかできる範囲を超えて、他人と救いあうことができるのかも、というのは驚きで、私自身がその視点に救われた。
2人が恋愛関係でもなく、親友でもなく、同じものを抱えてるわけでもない「他人」なのも嬉しい。他人だからこそ介入しすぎず救い合える部分もあるように見えた。
自分がしんどいと視野が狭まって見えなくなるけど、私たち、意外とそんなゆるい繋がりに心動かされて生きているのかも。

PMSやパニック障害を理由にして冗談を言い合うシーンがとても好きだったな。



余談。同じ映画を見たある人が「ぬるい」と言ったので、それについて考えている。
実際はそんなに周囲は優しくないよ、とか、打ちのめされる場面があまり描かれていなかった、とか。

なんで私はぬるいと思わないんだろう?

1つには、距離が近いからかなと考えてみる。生理前の理不尽な苛立ちや生理痛、ピルが合わないこと、生理だと伝えづらいこと。それは私の悩みだし、身近な友達の悩みだ。藤沢さんが冷静になった後どれだけいたたまれなくなるか、場面が変わったあの5年間どうやって生理と付き合ってきたのか、垣間見えるだけで十分しんどい。
 精神科医に話せるようになるまでのしんどさや、「治るまで10年かかる例も」と言われる重さ、なぜできないのかわからないのに動かない体への苛立ちも、自分や身近な人の体験を通して感じられる。

もう1つには、優しい周囲のいる社会で生きていきたい/その社会を選んで生きている思いがあるから、かも。
タイミングもあるけど、今の私には「みんなが冷たい社会」はどこか他人事で、「身近な人がすっと助けてくれる社会」の方がリアルだし、そう思っていたいのだ。


・まったくキラキラしてない松村北斗。(賞賛)

・山添くんの上司はなぜ泣いたのかな

・大学しんどい時期に「花束みたいな恋をした」観たのもあって就活しなかったのだけど、これ観てたら就職してたかも、とふと。
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