赤ちゃんパンダ

夜明けのすべての赤ちゃんパンダのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
5.0
2024.9.30
友人に勧められて観てボロボロに泣いた。
タイトルも良かったし、倉庫から発見した30年前のカセットテープとノートのメモ書き、
最後の移動式プラネタリウム、
自転車を磨くカット、
電車の中でパニック障害について調べる主人公と、メンタルクリニックでPMSについての本を借りるもうひとりの主人公。
だれかを亡くした人の自助会に参加する人。
しば漬けと鯛焼き。
みかんをほおばりながら歩いて、彼女にもお守りを渡す。

プラネタリウムに行きたくなった。
なによりもふたりが恋愛の関係にならないのがよかった。そこに救われた。きっと恋愛というものもすてきなのだろうけれど、それ以外の、でも確実にある、だれかとだれかの関係性や親密さについて描いてくれるのがうれしい。
自分をいま助けてくれている人たちや、自分をいま気にかけてくれる人たちのことを考えた。

都心の妙にきれいなメンタルクリニックの内装。

上白石萌音さんがすばらしかった。なにかをほおばりながら歩くのが似合うなあと思った。

お母さんの介護で転職することが案外あっさりと描かれていて(自分が今の職場から離れることも、そしてじぶんのなかで大きな存在になりつつあった職場の先輩が転職するということも)、きっとそれは、主人公にとって母親の介護が、義務のようなものではなく、そのための転職も自らが望んでいることだからなのだろうと思う。それはこれまで母親が自分のことをたくさん気にかけてくれたから発露する自然な感情なのだろう。
もうひとりの主人公にとっても、ロンドンへ転勤することになったからおそらく別れ話をしたのであろう彼女のような、0か100かどちらかしか選べないような関係性(恋愛はおおよそそうである)ではなくて、もっと付かず離れずの、柔軟で、実際に会うとか実際に近くにいるとかだけじゃない、実際に会わなくても実際に近くに居なくても心のなかにいる、いてくれるとありがたい存在だからなのだろうと思う。

ところどころに入る夜景のシーンがよかった。家で観たけど全編を通してほぼ泣いていた。
自分は映画というものがすきだな、映画というものに救われて生きてきたんだなと久しぶりにつよく思わせてくれる作品だった。
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