これは若い頃に2~3回は観ているんじゃないかと思うけど、約40年ぶりの鑑賞ということもあって、ストーリーはほとんど覚えてませんでしたね。
でも、ストーリーはどうでも良いようなもので、この独特の雰囲気を味わえれば十分の作品なんだろうなあと思う。現実とも幻想ともつかない、シュールでエロティックで退廃的で、ちょっと怪奇で物悲しい雰囲気。
観ている間は結構疲れるんだけど、見終わった後は、エンディングで流れていたツィゴイネルワイゼンのメロディが頭から離れず、いつまでも余韻に浸っていられるような味わい深い作品でした。
私は若い頃はクラシック音楽や絵画などの芸術にはあまり関心がなかったんだけど、この映画などを観たことがきっかけで、そういうものにも興味を持つようになってきたような気がしますね。
ツィゴイネルワイゼンなどは、数あるクラシック音楽の中でも一番ぐらい好きな曲になって、最近は仙台クラシックフェスティバルで、毎年のように生演奏を聴きに行っています。
たまに美術館などにも足を運ぶんだけど、特にダリとかピカソとかシャガールなどの、ちょっと不思議な絵を見るのが好き。来月東京に遊びに行く予定なので、もし時間があれば、国立西洋美術館で開催中のキュビスム展も観てきたいものだと思っています。
そういうものにも興味を持つようになってから、あらためて本作を観ると、若い頃には見えて来なかったようなものも見えてきて、やはり傑作だったんだなあと思った次第。
ちなみに、ツィゴイネルワイゼンというのは、ドイツ語でジプシーの旋律という意味だそうで、原田芳雄演ずる中砂の風来坊のような生活を、ジプシーになぞらえたんでしょうかね。それほど深い意味はなかったとは思うけど、ツィゴイネルワイゼンという音楽からそこまでイメージを広げた発想も非凡だったと思いました。