このレビューはネタバレを含みます
タイトルの「アナログ」という言葉を考えずにはいられない。主人公は「アナログ」な仕事を大切にする。CGやデジタルで済む図面やイメージ図を、手作業のぬくもりや空気感を感じるために時間を惜しまず力を入れアナログで行う。それは他の仕事ぶりや人との接し方にも垣間見える。思い人であるみゆきはある事情から「アナログ」な暮らしを選択する。スマホを持たないため連絡手段がなかったり、お店探しも地図を見ずにその場の探索を選択する。ドキドキ感やその場に流れる時間を感じるという。
現代社会で、人々はどれだけ2人のようなアナログ、言わばリアルな価値観を大切にできているのだろう。映画の感想ひとつとっても手のひらの画面の中に収まる時代。直接的に人との対話の中で何かを感じたり、時間を感じることができているのだろうか。恋愛すらも誰でもないAIがありもしない仮想の相性を決めてしまってはいないだろうか。
人の死は、デジタル化されていないとも思う。デジタルではいけないとも思う。宗教的な意義に限らず、生き死にの境を考えるということもまた、ひとつのアナログな営みだと感じた。
決まった曜日に会うということ。生涯を共にすれば何の変哲もないことになってしまうというのに、主人公の選択は尊く、覚悟を感じてしまう。反対に、日々会えること、言葉を交わせることがどれだけ幸福に満ちていることか。
これからは、毎日が木曜日。