このレビューはネタバレを含みます
アリーテ姫に起こった一連の出来事は、コロナ下の状況を思わせるシーンが要所で見られ、過ごし方に問いかけを投げているようだった。
最初は絵画を見ているようで、デジタルに疲れた目と心にとても優しい時間だと、うとうとしていた。
人の描く絵がこんなに癒されるものだなんて、新しい発見だった。今まで絵の価値があまりわかっていなかったので、もしかしたらこういうことなのかも。
さておき、
天高い塔の中に閉じ込められて、食事も一人きり、侍女に見張られているように食べる。
会話もない。(←まさに今の世界全体。外出自粛、飛沫対策で会話があまり推奨されていない。)
でもそれに抗うように隙をみて外の世界へ出る好奇心旺盛な子。
本当は外の世界に出たいのに。
アリーテ姫を使って権力が欲しい王子たちは、
夜、門番の目をくぐり、アリーテの部屋へズカズカ入ってくる。そして本当に残念なセリフしか吐かない。見た目も中身も貶される。
魔法使いまでやってくる。
アリーテ姫は無防備・ノーセキュリティだ。
その会話の中で、この町にみんな生きている、それを思う気持ちがあると姫らしいことを言う。
また、お城の中の人間は、城下町の外へ出たいアリーテ姫の思いを呪いだと言う。狭い世界に閉じ込められ、誰からも理解されない。
現代家庭にも同じような光景が見られる(コロナ抜きで)。
外に出たことがきっかけで、謎の急展開、老いた魔法使いボックスに魔法をかけられ、結婚してそいつのお城に住むことに。
理不尽しぎる。誰も止めない家族。喜ぶ民。
結婚=幸せの思い込みを象徴するシーンなのか。
そして今度はもっと窮屈な地下に閉じ込められてしまう (コロナリンク箇所)。
無気力・無為という魔法をかけられて、そのまま言いつけを守っている。
部屋には鍵がかかっていて開かない、と言われたことをそのまま信じ、出られないと信じ込んでしまっている (情報を鵜呑みにする、コロナリンク箇所)。
3つ願いが叶うリングをもらうも、無為なことに使ってしまう。
1. 今の部屋を少しでも綺麗にする魔法 (助けはこないのに)。
2.助けを待つ間の時間つぶしに刺繍をする魔法 (助けはこないのに)。
本当にぎくりとした。
今私がやっている部屋のDIYと刺繍に興味を持っていたから。
コロナ下で外出を控えなければならない中、閉じこもっているのは仕方ないが、それで本当にいいのかと問われた気がした。見透かされているようで、本当に怖かった。
自分の中のお話に耳を傾けるうちに、魔法が解ける。
自己との対話により。
答えは自分の中にあるのだ。
今の自分にも必要なこと。
無為でしていた刺繍を解き、外へ出るための道具に使う。
ただ習い事のようにやっていた糸は、目的のために使うものに変わった。
地下から解放される交換条件として、良い姫よ、と指輪の力を使うよう悪い魔法使いに促される。後ろを向けば雷が落ちると。
同じようにそのまま受け入れるアリーテ姫。
あれ?成長してない?
と思いきや、
すぐさま雷が落ちるか確かめる。良い姫ではないので、セーフ!となり、晴れて自由の身。
情報を鵜呑みにしないで自分で確かめることを経験した姫。
その後、色々あって老いた魔法使いボックスは魔法の水晶をなくしてしまう。それに執着する彼。
うわー、イタイ。。大人に刺さる光景。
泥だらけになりながら、一生かけて水晶を探すという彼。
その水晶に価値があまり無いことを分かっていながら手放そうとしない。
自分ができる些細な能力に執着し、大事なものを見落としている。
そこからのアリーテの発言は言うまでもない。
最初はよくあるお姫様が外へ飛び出して冒険し、自由を手に入れる話なのだと思っていたけど、華やかさはあまりない。
素朴だけれど、生きて生活することをチクチク刺してくる。
劇中、ボックスがアリーテ姫を必要以上に怖がる理由に、未知のもの、自分がすがっているものを壊される恐怖なのかな?多分もっと色んな意味が込められているんだろう。そこをもう一度見たい。
とても考えさせられた、見てよかった映画でした。
余談。
ボックスが水晶をsiri的に使うのがツボだった。位置情報を聞いたりw
使う用語も現代スマホ風になっていて、スマホって魔法なんだなと改めて思った。人間が作った魔法。