脳内金魚

犬人間の脳内金魚のネタバレレビュー・内容・結末

犬人間(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

千差万別の「え?」があるとおもうけれど、わたしは好きな系統。

シグリットぶん殴った時点で、自分の(生活の)邪魔をした彼女を排除してフランクとの元のふたりの生活に戻るか、番にするかどっちかかなぁと思ったけど。回答が、「シグリット、お前もか!」だったので、あのエンディングは予想はついた、かな。

これまた、全然背景が説明されない系映画なのだが、犬人間と言うとんでも設定がある世界線なので、その他の事象が「ま、犬人間いるしな…」で乗りきれてしまう、なんとも便利な大前提。

「両親は亡く、イケメンで性格もよしな億万長者」。それなのに、特定のパートナーはなしという、もう裏があるでしょという設定で掴みはオッケーなわけです。で、そのパーソナリティを誇示するでなく、出会い系アプリでいいなと思った女性に、地道にアプローチしていく。相手も好印象を抱いたところで、最大の秘密「犬人間」の存在を明らかにするが、当然まともな人なら受け入れるわけもなく。
でも、クリスチャンは相手のその反応は当然と、憤るわけでもなく諦観混じりに受け入れる。冒頭のフランクに優しく接するクリスチャン、シグリッドに紳士的に接するクリスチャンに、我々は「犬人間」側に問題があるのだな、クリスチャンはそれに付き合わされている側なのだなと知らずのうちに誘導されていく、その流れが巧み。

シグリットが、当初戸惑っていた割には、案外あっさりフランクを受け入れてしまい、ふたりの交際も当初の懸念をよそに順調。「どこがホラー/スリラーじゃ」と中弛みしかけたところで、犬人間しゃべる!案の定「おかしいのはクリスチャンだ」と宣う。そもそも成人男性が、片や唯々諾々と「犬人間」になることに、片や世話を一手に担うことを甘んじて受け入れている時点で「どちらもおかしい」。だからこそ、我々観客もシグリット同様、疑心暗鬼に陥る。
クリスチャンがフランクにする「お仕置き」が、『ザ レポート』で描かれていた米国で採用された拷問で、そこはなんとも寒気が。

すごく怖いとかはないのだが、見てる側の気持ちのつかみ方がとても上手かった。あと、思った以上に犬人間が可愛かった。
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