(失礼ながら)予想外の素晴らしさに面食らってしまった。”ツインズもの”の中でも、かなりのリアリティを追求しているように感じていたら、なんと監督も双子ユニットだった。
- 今年の大晦日で世界は終わるの? -
唯一、物語を薄っすらと覆っている影はY2K問題で、そんな舞台を彩るプロップスも最高だ。
・Nationalのラジカセ(最高!)
・カシオG-SHOCK Baby-G
・たまごっち
・OUTDOOR PRODUCTS デイパック
・NOKIAの携帯電話
・ノストラダムスの大予言
(当時の日本経済が世界に与えていた影響も見て取れる)
主役のティティヤー・"バイポー"・ジラポーンシンが本当に素晴らしく、表情の使い分けなど、ひとり二役とは思えない演技が心地良い混乱を運んできてくれる。(ボディダブルとCGでここまで出来るのか)
夏休みで帰省先(母方の故郷)、タイ東北部はナコーンパノムのエキゾチシズムも最高だ。祖母宅でもある店舗のポップでカラフルな色調。タイ式マンドリンと呼ばれる「ピン」と呼ばれる楽器の音色(トレモロ)も効果的に鳴り続ける。
中盤でふたりが多幸に踊り歌う楽曲は、Triumphs Kingdomという女性デュオによる『Handkerchief / ハンカチーフ』。"1999年"のリリース曲だ。そしてエンディングは、その名も『You & me』という楽曲。こちらはZom Marie と Billkin というアーティストのデュエットVer.も続けて使われている。どちらもいい曲で、鑑賞後にSpotifyで繰り返し聴いてしまった。
演出面で個人的に惹かれたのは、“8秒間”というキーワード。彼を射止めるための凝視時間と、カウントダウン信号機の秒数字のリンクは本当にオシャレだった。また、お祭り広場での雌犬の放尿と、主役ふたりが田園で行う行為は(笑)。このあたり、プロヂューサーとして名を連ねる『女神の継承』バンジョン・ピサンタナクーンも関与しているのだろうか。
とにかく、恐ろしく瑞々しい青春映画の傑作がまたひとつ誕生した。英題" You & Me & Me"も深すぎて泣きそうになる。