tsuku83

碁盤斬りのtsuku83のネタバレレビュー・内容・結末

碁盤斬り(2024年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

タイミングがあったので初日に鑑賞。
落語の話が元になっているという知識のみ。その肝心の落語の話は、噺家によってオチはいろいろ違うらしい。
ということで、久々の時代劇映画であり、白石監督の時代劇、新しいけどどこか懐かしい。懐かしいけど、新しい、そういう感覚を覚える映画だった。
江戸時代の長屋で暮らす冤罪によって藩を追われた武士とその娘。実直に
真面目に正しく生きようとする姿は、いっそ清々しく。
その親子が出会う萬屋の主人と跡継ぎ、以前から世話になっていると思われる吉原の主人、そして冤罪に関連する人々。
江戸時代の話のようでいて、今の時代にもつながる物語でもあった。
柳田格之進は実直で堅物であり、間違いは許さないという人間なのだろう。だから現代で言えば不正の内部告発をし、その反感を買って罠に嵌められたわけだ。不正をした側の人間たちにも生活苦など理由はあるのだろうが、やはり不正は不正。なのに、それを告発した側も苦労を強いられ、妻も亡くし、もちろん告発された側も苦労のある生活になり。唯一の救いは、藩主が格之進の冤罪が晴れたら許してくれたことか?いや、左門というかつての部下が今でも格之進を尊敬している所だろうか。
この1点をとっても、なんと現代と同じ事柄か!と思うし、むしろ現代の方がよっぽどひどいかも知れない…。
そして娘のお絹は本当に真面目で優しくて気が利いて仕事も丁寧。それでも父を一人にしておけず、結婚もしなくていいです、このままがいいですという。現代でもあるあるな光景…。
そんな二人を取り巻く人情話なんだが、めちゃくちゃむかつく!!というような悪役はおらず、悪役にも少し垣間見えるそれなりの理由もあったり。そういう意味でも気持ちの良い時代劇だった。
また、とても風景が綺麗、大きな背のススキの中を歩く姿など、それだけでカッコいい時代劇という趣がある。照明もとても柔らかく、それでいて繊細。また、江戸時代の夜の明かりと言えば、ロウソクの灯や行灯。これが良い感じで、ほの暗い感じが、ある種の静けさも感じられるし、役者たちの表情にも素晴らしい陰影をつけてくれる。
あとは何よりも囲碁をしている姿が美しく、囲碁もなにやら面白そうで、その技はどういう事なのだ?という興味がどんどん湧いてくる。
また、この映画、最初から最後までどこかしらで出てきた言葉がつながっているという点も、見ている側として面白いし、綺麗なタイトル回収も良い。
分かりやすい人情話でもあるので、時代劇としても非常にとっつきやすい作品だと思う。老若男女問わず、ライトな感覚で触れられる本格的時代劇という感じなので、おすすめ。
映画で時代劇がヒットする事はなかなか難しいと思うが、やはり時代劇作品が作り続けられる日本映画界であって欲しいと改めて思える作品。
白石監督の時代劇、2作目も期待したい所。
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