たけお

碁盤斬りのたけおのネタバレレビュー・内容・結末

碁盤斬り(2024年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

最高でした!
時代劇で描く武士ならではの気概と、その家族の覚悟、現代に通じる人情。
今、描くべき、今見たい時代劇を白石監督が作ってくれた。

彦根藩の進物係だったが、汚名を着せられクビになり、江戸へ流れ着いた浪人者の柳田(草彅剛)と、娘お絹(清原果耶)が質素に暮らしている。
前半は囲碁
後半は復讐劇

光の使い方が素晴らしく、碁石の美しさや表情の明暗をうまく使いながら、陰陽、善悪、心の変化も巧みに表現されていて、前半の囲碁の対局のシーンなど、囲碁好きにはうなるようなシーンだとしても、囲碁がわからない自分には退屈になりがちなところを、飽きさせず、集中させて見せる凄さがあった。
囲碁のことも、わかった気にさせてくれた。
昼も夕も夜も、長屋の湿っぽさも、大旦那の美しい庭も、遊郭の明暗も、復讐に燃える怒りの炎も、光と音が絶妙で、全体的に暗く陰気に映りそうなところが、派手さはなくとも、ヒリヒリ伝わる緊張感、役者の表情の変化に引き付けられる演出、時代劇特有の暗めの映像が、静かな怒りを感じさせ、明るいシーンでの心の平穏が、最大限に光量を落とすことで際立っていて、柳田親娘の清潔感が溢れ出ていた。

落語がベースらしいが、ストーリーも演出も素晴らしく、
登場人物の描写が丁寧だが、くどくないのが良かった。
ダラダラと感じさせないくらいの拡がりにして、全登場人物が、何故?そんな行動をするのか?の動機が良くわかる絶妙な長さにしていた。
柳田親娘、質屋の大旦那(國村隼)、その奉公人弥吉(中川大志)、遊郭の女将(小泉今日子)、この5人をきっちり描くことで、50両盗んだかどうかの濡れ衣、お絹を預かる遊郭の女将など、大事なシーンが古臭い時代劇の話にならなかった。
扱うのは江戸時代の話なのに、現代に通じるリアルなものとして、こちらに突き刺さってくる。

ただ、敵の柴田(斎藤工)はもう少し詳しく表現してほしかった…
めちゃくちゃ悪い奴で卑怯者のように見えていたのに、最後には、仲間のことを思っている男になっていたのが…
物事には裏表があって、善き行いが必ずしも全ての人にとって善きことではないと伝えたいのはわかるが、最後のやり取りと、掛け軸を売っていなかったってことだけで伝えるのは、素晴らしい話だけに惜しい気がした。

時代劇ってこんなものって、従来の型にはまらず、現代の感覚をもって、江戸時代を描く凄さを感じさせる映画だった。

それと、5年前?彦根藩時代の因縁を描くとき、画質が粗く、昔の映像にする演出も、分かりやすく良かった。

囲碁に詳しければ、もっと、楽しめただろうし、最後の迫真の殺陣も、これまでの囲碁の打ち筋を活かした演出になっていたのかな?と思うと、自分の無知が残念だった。
たけお

たけお