三月

碁盤斬りの三月のレビュー・感想・評価

碁盤斬り(2024年製作の映画)
3.8
落語の柳田格之進がベースとなっていると聞いた時は、映画にするにはちょっと地味なのでは…?と思ったし、草彅さんのさらさらとした声質では、少し優しすぎると思った。

結果、それらをいい意味で裏切ってくれる作品に仕上がっており、2時間があっという間だった。

特に真横から捉えた佇まいが、非常に柳田格之進然としている(?)草彅さん。
いつも思うけれど、彼は俳優としては結構不思議なタイプの人で、上手いとか器用というのとは少し違うところにいるように個人的には思う。そこにいるのは草彅剛のままでありながら、受け取る側のイメージの中で別の人物が動き出す…という、どこか落語のようなところがある人。

落語といえば、柳田格之進を軸としながら、文七元結や、エッセンスとして井戸の茶碗、百年目などいくつかの噺がちらつく構成であり、それでいて語りすぎない脚本も良かった。

おしまいまで言わなくとも、柳田様だからこうするだろうし、みんなも承知するだろう、お絹さんだからこう生きるはず、そして、柳田様の奥様でありお絹さんの母だからきっとこう思っていただろう…という、こちら側で了解ができるようなちょうどいい塩梅の描写であり、本当の意味で「見る側に委ねる」ということができている映画の良い例だと思った。
三月

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