社会のダストダス

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

3.6
2023年は思い返してみれば結構ホラーの豊作年だったのかな。シリーズものも多かったけど、個人的には『ブギーマン』や『ヴァチカンのエクソシスト』、『サンクスギビング』など単発作品のほうが良かった印象。どちらかといえばクラシカルな手堅い内容が多かった印象の中で本作は設定もかなりユニーク。

ルールが単純なのが良い。出所不明の手形のオブジェと握手して“Talk to me”と唱えると、幽霊が目の前に現れ、“Let you in”と言うと幽霊を自分に憑依させることが出来る。90秒以内なら安全、ということでお手軽にスリルを味わえるゲームとして、パーティーの名物アイテムとなっていく。

このタイプの映画だと主人公に好感度が持てるかどうかでハラハラドキドキ度がかなり変わってくるように思う、生き残って欲しいキャラクターであるほど没入感が変わってくるので。その点では本作の主人公はちょっと微妙だが、同情はするけど感情移入は出来ないところが絶妙な塩梅なのかも。とはいえ、一人くらい応援できるキャラがいればもっと良かったかな、強いて言うなら主人公の親友がそれになるが。

Youtuber出身の兄弟監督だからか、若者たちの刹那的な承認欲求や一線を越えるスリルを求める姿を動画に撮影する様、そしてそれをスクリーンを通して俯瞰した気持ちで観たときの絶妙に共感しがたい感じは、行動原理をよく表している。そして行動には結果が伴うということを教示するような深みにはまっていく展開は、視覚的なホラー演出よりも生々しい怖さがあった。



🏆ゴールデン・ダストダス賞2023🏆 作品賞 後編

前回からの続き。超長くなってしまったので、2回に分けてます、今回後編。

2023年総括、書いてなかった作品のレビューを簡単に済ませるついでに、今年の優秀作品を独断と偏見と贔屓で選び自己満足に浸ることを目的とするゴールデン・ダストダス賞2023。

前回に引き続きラストの作品賞、年間ベストの形式にしています。これを書いている今現在の心境での順位です。個人的に1位から3位くらいまでは不動だと思いますが、それ以外は日によってコロコロ変わるかもしれません(笑)

☆作品賞(年間ベスト) リスト 5位から1位


5位『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』

世界で一番有名なゲームキャラを地球人にアンケートを取れば10人中6人くらいがそう答えるかもしれないマリオの映画化。原作イメージの再現性の高さは歴代ゲーム映画随一といえますが、クリティックとオーディエンスの評価の隔たりと実際の興行収入の結果という点では、2023年のハリウッドを象徴する作品だったと思います。


4位『バービー』

数々のヤバい人形映画を生み出してきたハリウッドの一つの到達点。個人的には本作とマリオの大ヒットが(多少はゴジラも)、ハリウッドが娯楽作品に対して募らせている停滞感を刺激して多くの大作映画の不振に繋がっていると思います。多様性はかく在るべきという説教ではなく、男性と女性、創造者と消費者、芸術と大衆とそれぞれに多様な解釈の余地を残す作品でした。


3位『ジュリア(s)』

フランス映画。あの日ベルリンの壁の崩壊を見に行っていたら…、ピアノコンクールの結果が違ったら…、バイクを運転していなければ…。人生を大きく変えたいくつかの分岐点、あの日の“もしも”は自分に何を与え何を奪ったのか。過去の選択に思いを馳せながらも、今を生きることに勇気づけられる人生賛歌。4つの人生を行き来し、17歳から80歳までを演じるルー・ドゥ・ラージュの演技が圧巻です、今年最大のダークホース作品となりました。


2位『ノースマン 導かれし復讐者』

うおおおー!!!ヴァルハラァァァー!!!聞け!オーディンよ、ヴァルハラを運命づけられし王子の物語を!暗黒の導師ロバート・エガースによるシェイクスピアの『ハムレット』を原案としたリベンジ・アクションよ。小難しさはなく、そのハムスターとやらを知らぬ余にも明快なストーリーであったぞ。アレクサンダー・スカルスガルドの地獄の中で研ぎ澄まされし見事な腹筋神社、喉笛に喰らいつかんとする闘争心は野獣の如き猛々しさよ!共演のアニャ様の神秘的な美しさもこの世のものとは思えぬほどよ、はぁ~♡アニャたま~😻 …むう、つい興奮してしまったわ、血沸き肉躍るとはこのことよ。


1位『アフターサン/Aftersun』

カメラに映った記録と少女だった当時の記憶、あのとき父が何を思ったのかの想像と成長した今の願い。既に複数回観ましたが、一度目に観た印象と二度目で全く異なる感想の映画になりました。最初に観たときは何も気づいてない11歳のソフィーの視点で観るのでバカンスで太極拳する変なオヤジにしか見えないけど、全容を知った状態の二度目は20年後のソフィーの目線で観て、父親の本当の姿を垣間見ることが出来る仕掛けは凄かったです。父親カラムが今どういう現状なのかの説明はなく、なぜ今のソフィーにとって遠い存在なのかも観た側の解釈に任される部分が多いため、明確な答えを求める人にはモヤモヤが残る映画かもしれません。父親の残像に重ねたソフィーの願いがもう一度叶うものなのかは分かりませんが、ソフィーは自分なりの折り合いをつけたように見えます。


という訳で作品賞は🏆『アフターサン/Aftersun』です!


いつもFilmarksでフォローさせていただいている方々の、この時期の年間振り返りの投稿をよく拝見しており楽しみにしております。1回の投稿で2023年の作品の何が良かったか結果だけ書くことも出来ましたが、レビューを書いてない作品の消化も兼ねて長々とやってみました。急に連投したり何日も沈黙したりと不安定な更新ペースでやっていますが、いいね!やコメントを頂くととても嬉しいです。



ゴールデン・ダストダス賞2023 まとめ

作品賞 『アフターサン/Aftersun』
特別賞 『Wave Makers 選挙の人々』
フューチャー賞 『マッドマックス:フュリオサ』
ベストシーン賞 『アフターサン/Aftersun』“♬Under Pressure”
主演男優賞 レオナルド・ディカプリオ『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
主演女優賞 フローレンス・ピュー『87分の1の人生』
強敵・悪役賞 ゴジラ『ゴジラ -1.0』
助演男優賞 綾野剛『最後まで行く』
助演女優賞 アニャ・テイラー=ジョイ『ノースマン 導かれし復讐者』
過小評価作品賞 『僕と幽霊が家族になった件』
旧作・準新作賞 『フォールアウト』

改めて今年もよろしくお願いします。