青の

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーの青ののレビュー・感想・評価

4.0
【 あのオブジェamazonで売ってたよ 】

YouTubeで心霊動画を見漁っていると、日本と海外とでここまで違うのかと感心する。
日本だと「物音」や「気配」で終始するも、海外だと具体的に「物理現象」を見せてくれる。
動画によってはその御姿まで。

個人的に『心霊はエンタメ』だし、真偽なんてどうでもいいと思っている。
なので、じゃんじゃん姿を現してくれるのは嬉しい限り笑

で、今作。
オーストラリアの600万人越え双子YouTuberが監督をしている。
ついにYouTuberの作品がハリウッドに進出か?!
(A24作品と思われているが、双子の作品をA24が買い付けたと言うのが正確なんだとか)
しかも、主人公ミア役の娘は無名の新人。
制作費450万ドルからの興行収入9200万ドル!

この感じ、ネット黎明期のYouTubeもfacebookも無かった頃に、アイデアだけでヒットした『ブレアウィッチ ・プロジェクト(1999)』を彷彿とさせる。

今後、もしかしたらこういう流れが一般的になるかもしれませんね。
無名のクリエイターや役者がトレイラーをweb発信→ハリウッドが買い付け→劇場公開みたいな。

昨今は劇場公開レベルの動画や編集の出来る資機材も安価で手に入れやすい。
役者志望の人も闇雲にオーディションを受けまくるより「とりあえず何でもいいから出ちまえ!」的な行動に移しやすくなるのかも?

とりあえず今作は怖かったです。もちろん人それぞれですが。
幽霊の造形も「うわ…」ってなるくらいキモかったです笑
ジャンプスケアも有り。
さすがYouTuberだなあと感心したのは、中だるみの無いテンポの良さ(悪く言えば情緒に欠けるか?)。
とにかく見やすく分かりやすかった。

内包するメッセージもあるようで、個人的に感じた事や解説みたいのは以下で。

—以下ネタバレあります—


























—以下ネタバレ感想—


今作の元ネタは双子の地元で、ドラッグでラリったティーンを見かけての発案だそうです。
(ネットで見かける『フィラデルフィア・ゾンビ』、もしかしたらあんな感じなのかな?)

とりあえず退屈ではいられない10代が、ドラッグ・アルコール・セックスを超える新しい快楽として手を出したのが『降霊術(憑依させる)』って設定が面白かった。
しかも「信じる信じない」の次元ではなく「いる」前提なのが斬新だった。
昔であれば厳かな雰囲気で真面目に且つビビりながらの儀式だったろうが、こいつら(主人公達)はパーリー気分でわちゃわちゃとおっ始める。

これはたぶん「コックリさん」や「ウィジャボード」を深層的に手を出してはいけないものと分かっている事と、ドラッグに手を出す時の危うさと気軽さを揶揄しているのかなとも。
仲間に入りたいから、みんな楽しそうだから、一回だけなら…。


★カンガルーの意味
序盤、ミアは瀕死のカンガルーを自らの運転で轢けなかった。
側にいたライリーは「楽にしてあげよう」と言ったが、ミアは自分以外の誰かに轢かせようと放置した。
ラスト、ミアは自分の手で(ハサミで)ライリーを楽にする事が出来なかった。
自分以外の誰かに轢かせようと、車椅子に乗せたライリーを連れ出した。
結果、出来なかった(しなかった)。
それによってミアは自死による彷徨う霊となってしまう。
と言うサイクルのシンボルというか揶揄。
また車道に横たわるカンガルーの画面と、ラストのミアのそれがまったく一緒。


★母親の霊はミスリード
ミアの母親への想いが強すぎて、見ているこちらも「私は自死じゃない」「ライリーを楽にしてあげて」って母親の言葉を信じてしまう。
「お母ちゃんがミアを助けようとしてるんや!」みたいな。
たぶん、こう言う流れの作品何百とあるような。
ところが、そうでは無くガチでライリー共々ミアをも自身の世界へ引き込もうとしていた。
つまり、母親は自死であった。


★自死ダメ!絶対!
霊、悪霊、天国、地獄の定義みたいのはとりあえず置いといて…
今作での悪霊みたいなアイツらは、母親含め地獄でも天国でもない間(はざま、辺獄、リンボ)にいる設定。
で、怨念や後悔などの執着に囚われると天国に行けず間を彷徨う事に。
で、宗教により解釈は様々ですが、自死は尚更、絶対天国には行けない(見てきたわけではないので、あくまでオカルト界隈での話し)。


悪霊となって性格も変わった母親を信じきっていたミアは、ライリーを(殺して)助けようとしたが、間際の母親の言葉で我に返る(車椅子の手押しハンドルから、そっと手を離している)。
そして、自責の念か母親に会いに行こうとしたかは不明だが、ミアは車道に飛び出してしまう。
結果自死となってしまう。
(配信視聴ならばスローで見て欲しい。飛び込もうとするミアをジェイドが引き戻そうとしている)。


霊となったミアは病院に(おそらく一連の病院にミアも運ばれたのだろう)。
ミアに刺され死んだパパもそこに。

パパはエレベーターに乗ろうとしていた。
ホラーでよく表現される『天国への階段』である。
よく見ると、エレベーターの上サイン(上の階=天国)が点灯している。

ミアはパパを追うが、一緒にエレベーターに乗ることは出来なかった…。


—〆—
精神疾患による幻覚とオカルトの危うい繋がりみたいなものを『SMILE』で。
老いた時に覚悟せねばならない症状とオカルトを『テイキング・オブ・デボラ・ローガン』で感じた。
で、今作ではドラッグとオカルト。
打ちひしがれ、弱り切った精神状態故に「寂しいから」を言い訳に自ら手を取ってしまう危うさ。
直接的なメッセージではなくとも、これは人によって響く内容なのでは?


そこまで深読みせずとも純粋にホラーとしても良作だし、尺も短めでありながらしっかり怖かったです。


そう言えば、あの女性見たことあるなー思ったら『ロード・オブ・ザ・リング』のエオウィンの人だった♪
青の

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