ミシンそば

12日の殺人のミシンそばのレビュー・感想・評価

12日の殺人(2022年製作の映画)
3.4
「ハリー、見知らぬ友人」のクセ強感が絶妙だったドミニク・モル監督最新作。
実際の未解決事件を題材にした、フィクションが原作のため、登場人物の意志はともかくこの映画が到達できる地点は「未解決のまま」と言うめっちゃ残酷で露悪的な映画だ。

解決まで持っていけないし、ヒーローもいない。
捕まえといた方がいいようなクズ(被害者の死を嘲笑する奴も出てくるし、ストレートな暴力クソ野郎も出てくる)は、明確なアリバイがあって事件には全然関係ない。
調査は入念で、調書がちゃんと書かれているって作中でも明言されてるのに、何でここまで糸口すら掴めないのか。
冒頭で示される未解決率20%が多いのか少ないのか、あんまり自分には分からないが。

捜査と並行して、モルは古い価値観と新しい価値観の対立、正義の持つ悪質さ何かを描こうともしているとも感じた(寧ろ、解決まで描くことができないから、さっさとそっちへシフトしたようにも感じたし、それくらい作風自体が露悪的に過ぎた)。
家庭の事情を含めて、途中で耐え切れなくなったマルソーとか、明らかに暴走刑事そのものだし、ヨアン班長にしたって意識の固着振りが凄まじくて、事件に執着し過ぎるのも然もありなん。

悪は悪として、有害にしかなり得ない。
だが押しつけがましい正義にもまた、「それはお前が気持ちよくなりたいだけだろ」って言ってるようであった。
ただ、ラストの「終わり方」は、仕方ないとは言え事実上のドロップアウト(諦め/屈し)にも映ってしまうのは、損だとは思ったな(そう終わらせないと「プレッジ」みたいに救いがゼロになっちまうが)