木蘭

窓ぎわのトットちゃんの木蘭のレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.5
 トットちゃんだ!本当にトットちゃんだった!!

 トットちゃんがね、アニメにありがちな子供の姿をした大人じゃなくて、本当に生き生きとした子供なのが素敵なんだけど、時折、フッと徹子の面影が浮かぶんだよね・・・凄いよ。
 そんなトットちゃんがもう愛おしくて、「なんでみんな、私の事、困った子っていうの?」って呟くシーンで、一発目の涙腺バルブ開放。

 おおむね丁寧に原作をアニメ化しているんだけど、トットちゃんたちが空想の世界に飛び立つシーンは、いくつかのチームが競う様に実験的なアートアニメを作っていたりと挑戦的だったりする。
 子供たちの動きや表情がちょっと独特なので好みが分かれるかも知れないけど、非常に昭和的な演出を意識しているのかな・・・と感じた。『この世界の片隅に』の影響も感じるけど、もっとこう、往年の少女雑誌の挿絵とか『はだしのゲン』とか『3年B組金八先生』的な。

 そんな子供たちの世界の外側では、どんどんと社会が嫌な世の中になっていくのを少しずつ描くのだけど、あまり説明的ではないのも良い。
 フッと駅員さんが女性に変わったりとかね。
 学園の子供たちと、彼らをからかう地元の子供たちの服装の対比とか・・・トモエ学園って当時の私立だから、生徒はみんな富裕層というか上流階級の子供たちなんだよなぁ。生徒が減っていくのは、戦争が激化して、そんな富裕層も疎開したり、生活が立ち行かなくなっていくからなんだろうけど。

 しかし子供の頃に原作を読んだ時も凄いと思ったけど、改めて校長先生が凄いんだよね。本当に凄い。
 1920年代にパリに留学して今でも色あせない最先端の教育法を学んで、それを実践するために学校を創立するのも凄いけど、もう立ち振る舞い全てが大人んだよなぁ。子供の成長を待っていられるし、本当にダメな時はダメって言えるんだよね。
 この校長先生の事をこの世に残しておきたくて、徹子が小説を書き上げたというのも分かる。

 惜しむべきは大人たちの演技がちょっと引っかかる事。演じているのが俳優で声優じゃないし、器用なタイプじゃないからというのあるけど。
 そんな中でアニメの中に溶け込んでいるのが、大石先生役の滝沢カレン。変な癖のない素直な女優さんなんだなぁ・・・と思った。トットちゃんみたいな人だしね。

 ちなみに劇中に出てくる「のぞきからくり」絵本、まったく同じ物が日本でも復刻版が出ていて、今でも買えます。参考にしたのかな?
木蘭

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