木蘭

リンダはチキンがたべたい!の木蘭のレビュー・感想・評価

4.8
 徹頭徹尾フランス!という作品・・・そして、色がスクリーンの上で踊っていたよ。

 冒頭の団地に取り残された子供達がヒソヒソとざわめくシーンで、『ザ・チャイルド』や『光る目』みたいに子供達が反旗を翻すホラーの予感がするが・・・当たらずとも遠からず。
 後半は母娘が引き起こした騒動を切っ掛けに、ストライキとデモで大人が不在の郊外団地を子供達がカオスを引き起こし、大人達が大混乱するハッピーな物語。

 絵柄も色使いもシンプルで抽象的なのに、驚くほど多彩で、なおかつ描写は写実的だったりもする表現が素晴らしい。

 特に、一人一人のキャラクターに色を割り当てて、その一色で塗りつぶす・・・というアイディアは素晴らしくて、髪・眼・肌の色が分からないので、見た目でエスニック・グループが判断出来ない(お父さんがイタリア系とかは台詞で分かるけど)のは斬新。まさしく個人主義。
 多様性を表現しつつも平等性を担保しているというのは、"共和国"の理念と理想を体現している。

 勿論、頭でっかちな映画では無くて、子供が楽しめる作品を作っただけ在って、物語はシンプルだけど、人物描写も豊かでエモーショナル。
 本当に馬鹿馬鹿しい(最高!)ドタバタコメディには素直に笑ってしまうし、家族の物語には・・・挿入歌も素晴らしくて・・・メソメソしてしまった。

 貴方が生きていた事は忘れないよ・・・って話だけど、食べられるニワトリにとっては勘弁してくれ!という話でもあるな。
木蘭

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