みかぽん

窓ぎわのトットちゃんのみかぽんのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
3.8
私は子供が真剣勝負で挑んで来る時には手加減なんてしない。いくら大人げないと言われても、それは対等な人間としての私なりの仁義の切り方なので仕方がない。
理由は、自分が子供の頃に手加減されて勝ったことが悔しくて悲しくて、(勝たせて貰っても)全く嬉しくなかった記憶があるからかも知れない。なので本作の泰明ちゃんのプライドの傷つき方が手に取るように分かるのだった。

「私、大人になったらトモエの先生になる」と伝えたトットちゃんの言葉に、校長先生は励まされただろうなぁ。
この言葉、校長先生には保護者に感謝される何倍も嬉しかったに違いない。
例えば、親の仕事をリスペクトして跡を継ぐと決めた子供だってそう。その本人に親孝行の実感はなくても、親はその言葉が嬉しく心強い。何故なら自分の人生は間違っていなかった、を子供が身をもって補強してくれた瞬間なのだから。

「窓際のトットちゃん」は、かつて子供だった自分、大人になった自分がその物語に自らを投影し、共感出来る普遍的な物語だと思う。

私の両親は戦前生まれで、ほぼトットちゃん世代だ。
日本が戦争に向かう変遷を身をもって感じ取り、国家総動員法のもと、国の統制に従いながら戦火に塗れ、敗戦後の惨めな時代を生きた最後の証人たちだ。
また私がトットちゃんの年頃の頃は、縁日に神社の参道を歩くと、手足を失い、兵帽を被った老人が俯いたまま物乞いをする姿をまだ見る時代でもあった。
現代を生きるトットちゃん世代、もしかしたらその親御さん世代は、こうした生き証人からの話や姿を見聞きする機会はほとんどないと思う。
どんな受け取り方でも構わないので、一人でも多くの方に観て欲しいと思う物語であった。
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