パングロス

はたらく細胞のパングロスのレビュー・感想・評価

はたらく細胞(2024年製作の映画)
4.1
いやぁ、面白いぢゃないっすか。

原作は、かなり前に最初の方だけだが読んでいた。

永野芽郁のキョトン顔な赤血球は終始可愛いし、「ぶっ殺す」の口癖で周りから引かれる佐藤健の白血球は無表情なのに笑えるシーンが多いしで、多彩な登場「細胞」のキャラがかなり豪華な俳優陣による適材適所な配役によって見事に描き分けられていて、2時間弱の長編コスチューム・コントとして大成功している。

ヤマザキマリ原作の『テルマエ・ロマエ』シリーズ、魔夜峰央原作の『翔んで埼玉』シリーズと、脱力系コメディ漫画の映画化に数多く取り組んで来た武内英樹監督としても、最も成功した作品となったのではないか。

【以下、ネタバレ注意⚠️】








敵キャラも強烈過ぎる造型と、瞬発力のある演技巧者を配して「出オチ」での笑殺に挑みかかって来る。

特に歌舞伎仕込みのアクの強さをフル発揮した肺炎球菌の片岡愛之助、「いくよくるよ」かいっ!とツッコミを入れたくなった黄色ブドウ球菌の小沢真珠には大爆笑させてもらった。

ただ、それこそ歌舞伎顔負けな白塗りや全身着ぐるみで判別できない俳優も多く、白血球幹部の好中球先生の塚田高史や、化膿レンサ球菌の新納慎也は、キャスト表を見るまで分からなかった。

*参考
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/はたらく細胞

減点要素があるとすれば、父親の漆崎茂(阿部サダヲ)の体内の雑な描写、なかでも板垣李光人の新米赤血球は好演だったが、加藤諒の先輩赤血球の同性愛的下心なウザ絡みが文字通りウザいだけで、一ノ瀬ワタルを投入しての肛門描写のクドさも、さすがにいい加減にして欲しかった。

本作で、現実の日胡(芦田愛菜)が突然ガンに見舞われるのは本編に当たる体内編に変化を付ける「コント進行の都合上」やむを得ない展開。

現実編が病床の愛娘の命を繋ごうとする家族愛の感動ドラマになるのは当然の成り行きと言えるが、体内編でのラスボス、佐藤健先生の良い教え子だった白血球少年がダークサイドに堕ちた白血病細胞のFukase、その彼の拗らせた愛憎演技が本職の俳優を凌ぐ凄さで、正直彼の登場シーンでは震撼を抑えられず、それはやがて感動の涙さえ誘って来た。

「笑い」の受け止め方は人それぞれで、本作の評価も人それぞれなのは致し方ないが、かの脱力の極みたる『テルマエ‥』でさえ本国イタリアでも受けているそうだから、アニメ大国らしい「動く科学漫画コメディ」たる本作も、きっと海外でも大いに受けることだろうと思う。
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