ビンさん

妖怪剣客のビンさんのレビュー・感想・評価

妖怪剣客(2023年製作の映画)
3.5
シアターセブンにて鑑賞。

他に作品を観に行った際に、予告編を観て面白そう、というか、正直ビックリした作品。

ロビーに置かれていたチラシを見ても、監督された大木ミノル氏はもとより、出演されている方も存じ上げない方ばかりで、いったいこれはどういう方々が作ってらっしゃるのか、とにかくその興味が勝ったわけで。

主演は柳生十兵衛に座頭市。
この二人が天草四郎と戦うって、座頭市はともかく、この極めて山田風太郎的なテイストは、まんま僕のお好みであり、予告編では諸々VFXも駆使されていて、なんというか作り手の熱意が伝わってくる。

そんなこんなで、楽しみに劇場へ行ったらば、嬉しいことに上映前に寸劇が上演されるというオマケ付き。
僕の母が生前よく言っていた、映画上映前に出演者が歌を歌う、例えば美空ひばり主演映画の前に、本人が舞台歌を披露するという「実演」が、本作においても再現されるというわけだ。

その寸劇も本編もじつに面白く、特に本編にいたっては荒唐無稽なその展開には、これは監督はじめスタッフが楽しんで作ったものだなぁ、ということが強く伝わってくる、そんな作品だった。

監督の大木ミノル氏はKCN(近鉄ケーブルネットワーク)で番組を持たれているという、僕の住む奈良には関係の深い方だったり、ヒロインを演じた羽田野裕美さんは、かつて僕がパーソナリティをしていたコミュニティFM局、FMハイホーで現在パーソナリティをされているという、いわば僕の後輩(笑)にあたるという、なんだかとっても身近な方々が、本作を作ってらっしゃったことに、いかに自分のアンテナが緩んでいることを痛感した次第。

しかも、舞台は奈良の柳生の里であったり、ロケーションを奈良県立民俗博物館で敢行されていたりと、諸々奈良が関っていて嬉しい。

シアターセブンでの初日には、監督の大木ミノルさん、柳生十兵衛を演じた上野貴彦さん、座頭市役の稲森誠さん、羽田野裕美さんが実演ともども登壇。
上野さんの十兵衛、稲森さんの座頭市もばっちりキマっていたし、稲森さんは舞台でも座頭市を演じてらっしゃるとのこと。
今度は機会があれば、舞台の座頭市も観に行きたいと思った。

大木ミノル監督は、観終わって何を食べに行く? と言えるような娯楽作品を目指したという。
映画は完成して公開されたら、それを観る人のものであって、作品についてあそこはどうだ、ここはどうだ、というのは観た人の特権だ。
中には余計なお世話だが、ここはどうだこうだ、と、観せないうちからどうこういうクリエイターもいて、そういうものには正直うんざりする。
そういう意味でも、クリエイターとしての矜持を感じた。
ビンさん

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