Breminger

ふたりの傷跡のBremingerのネタバレレビュー・内容・結末

ふたりの傷跡(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

インスタの広告で流れてきた映像がとても好みなものだったので近くでの上映を待っての鑑賞。舞台挨拶付き上映でした。

文化祭前に親友のハル自殺してしまい、心を少しだけ塞いでしまったミナの元にやってきたのはドラムが演奏できる転校生のハルカ、2人は一緒に文化祭に出ようと約束するが…といった感じのあらすじです。

いじめや自殺というものをテーマに扱う作品はコロナ禍以降多く増えており、そのテーマ一本で突き進んだ結果、陰鬱な展開ばかりの作品が生まれるといった光景を多く観てきましたが、今作は暗い部分はありつつも、そこを補う爽やかさがあったのが印象的でした。
とにかく前を向いていかないと、と頑張って踏ん張って進もうとするもどこか躓いてしまう、自分にもよく当てはまりますし、とにかく現状を脱さないと何も変わらないと強く思う気持ちを表には出せずにいるミナの表情や行動は強く残りました。

学校での演奏シーン、ステージ上でもグラウンドでも屋上でもない、体育館のど真ん中にギターとドラムというシンプルなセットから繰り出される力強い楽曲がとても良かったです。役者陣の生演奏というのも作品としてのクオリティを底上げしており、このシーンを見ただけでも映画館で観れてよかったなと思うことができました。
ラストシーンでミナの手を引っ張ったのはハルなのか、それともハルカなのか、観る側に委ねられたシーンで膨らむ考察ほど面白いものはないよなと再確認することができました。
駆け抜ける夕暮れの帰り道、とてもとても素敵なカットでした。

ただ「ふたりの傷跡」というクレナズムの楽曲は本当に良い曲だと思うんですが、劇中4回ほど歌われており、演奏シーンはいいんですが、エンドロールでも流れるのは少しくどいなと思ったところに、クレナズムのMVとしてもう一度「ふたりの傷跡」を流れてきた時は流石に胃もたれしました。
製作陣がこの曲が本当に好きなんだなというところは伝わってくるんですが、同じ曲でも短時間に何度も聞かされると流石にモヤっとするところがありました。

キャラクターの感情もなんだかブレッブレで、クラスメイトはそれまでうんたらどうたら言っていたはずなのに演奏シーンになったら急に手助けをするし、無茶苦茶ひどい言葉を浴びせる割には別に説得力も何も無いしで響かないし、ミナのお母さんはヒステリックなのか情緒不安定なのか、登場シーンが少ないので判断ができかねませんし、店長も何故か入院してて語りかけてくるのは流石に恐怖でした。

限られた予算と時間と人数、しかも撮影中はコロナ禍真っ只中という大変な状況で作られた今作。もちろん拙いところは多いですし、色々引っかかるところはありましたが、王道青春ものとしては綺麗に完結したなぁという印象です。監督が次にどんな作品を撮るのか、とても気になるので追いかけていきたいと思います。
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