ねむろう

バカ塗りの娘のねむろうのネタバレレビュー・内容・結末

バカ塗りの娘(2023年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

2023新作_164


漆は、きっと待ってくれる。


【簡単なあらすじ】
「私、漆続ける」その挑戦が家族と向き合うことを教えてくれた――
青木家は津軽塗職人の父・清史郎と、スーパーで働きながら父の仕事を手伝う娘・美也子の二人暮らし。家族より仕事を優先し続けた清史郎に母は愛想を尽かせて出ていき、家業を継がないと決めた兄は自由に生きる道を選んだ。美也子は津軽塗に興味を持ちながらも父に継ぎたいことを堂々と言えず、不器用な清史郎は津軽塗で生きていくことは簡単じゃないと美也子を突き放す。それでも周囲の反対を押し切る美也子。その挑戦が、バラバラになった家族の気持ちを動かしていく――。



【ここがいいね!】
ゆっくりと時間をかけることの大切さだったり、ゆっくりと時間をかけなければたどり着けない場所だったりを丁寧に描いた作品だったかなと思います。
津軽塗りに向き合う過程で、娘の美也子は自分の人生と向き合い、父と向き合い、祖父と向き合い、出て行ってしまった母親と向き合っていく作品でした。
そんな中で、音楽が非常に良かったなと思います。音楽といってもキャッチーなBGMというわけではなく、小林薫さん演じる父親と美也子が2人で漆を塗る作業の工程で立つ音や、塗りの工夫の一つとして使う菜種が擦れ合う乾た音、さらに青森の厳しい寒さを表すような風の音などを中心に、要所要所で優しく包み込むようなピアノが鳴っていき、映像と音楽が非常に美しくマッチした作品になっていたと思います。



【ここがう~ん……(私の勉強不足)】
「サスティナブル」という言葉が何回か使われていたり、美也子のお兄さんが花屋の男性とお付き合いをしている関係で「パートナーシップ協定」というものも、取ってつけたように感じてしまいました。
また、美也子は最初スーパーでパートをしているわけですが、ある程度お父さんの仕事を手伝えるレベルの技術はあったので、むしろパートをやらずにお父さんの仕事手伝っていた方が生計は立っていたのではないかと邪推してしまいます。もちろんそうだとしても、お金がカツカツだったり、そもそもまだ美也子にも覚悟がなかったということなのだとは思います。



【ざっくり感想】
ゆっくりと時間をかけて完成する津軽塗りと、ゆっくりとじっくり時間をかけて織りなされていく人との関係というものをうまく表現した作品でした。
美也子の人生を応援したくなるような作品だったと感じます。
ねむろう

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