ワンコ

攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間のワンコのレビュー・感想・評価

4.5
【「19(Q)84」から「1A84」へ/最後の人間】

前作「持続可能戦争」からの伏線に解を与えようとしているが、それは正確には”解”ではなく「たどり着くことの困難な解を考え続ける」ということだ。

もう一つ、気がついたというか、考えたのが、「1984」の「9」は実は「Q = Question」であって、つまり「1Q84」も示唆していたのではないのか。村上春樹さんの小説と同じくタイトルだが、Questionに対してのAnswerだから、「最後の人間」では「1A84」になったのではないのか。

僕が前作で”手を広げすぎ”と感じたものは、ここでも示唆されるが、僕たち自身が未だ解決に至る道筋さへ見つけられないでいることだ。

ジョージ・オーウェル作「1984」の一節「戦争は平和なり 自由は隷従(攻殻機動隊では「屈従」)なり 無知は力なり」

戦争は平和ではないことは、ウクライナ戦争やガザ地区の戦闘で明らかだ。

自由は隷従でもなければ屈従でもない。自由が一体何であるのか僕たちは考え続けているのだ。
そして、民主主義も同様だ。更に、これを考えることは無知では成しえない。
知は力なのだ。

たとえ最後の人間であっても、生き残るのは自由で知恵のあるものだ。歪(いびつ)な価値観に拘って暴力や誹謗中傷を繰り返すレイシストである民族主義者や、特定の政治思想に基づいた専制主義者、宗教原理主義者、ネット民やネトウヨは、せいぜい争いを持続するだけで、彼ら自身は持続不可能であるはずだ。

「最後の人間」というタイトルも、「1984」と同じように逆説的な意味で付けられたのではないのか。

僕は、攻殻機動隊のシリーズに貫かれている人類に対する問いかける姿勢が好きだ。
ワンコ

ワンコ