マテ

ハンガー:飽くなき食への道のマテのレビュー・感想・評価

3.4
炎と煙があまりにも美しい作品。所々に社会風刺を感じる。サイチョウ密猟も実際の密猟事件のオマージュなのだろう。金持ちと貧乏人、貪る者と貪られる者、独裁者、軍と政治家の癒着など、渋い気持ちになりながら観た。経済格差、社会の分断。生きている世界があまりにも違ってしまっている。「法を犯すのはダメです」と言える主人公の強さよ。
勝負の結末はあまりにも酷い。トン、それは渇望に身を委ねたのではなく、矜持を捨てたと言うんだよ。失望と絶望が尾を引く後味悪い結末ながら、主人公の最後の選択は割と好きだった。自分で決めて、自分で選んだんだね。
数年前までは私も“手に入れるには渇望しなくては”と思っていた。そこから逃げたと言われればそれまでだが、タイドラマに出会って惹かれて、渇望すること諦めてから、少しずつ心地よさと穏やかさを感じることを知り、自己を受け入れることが少しずつできるようになってきた。多少の振れ幅はあるが、たぶん生きてきた中で今が一番メンタルが安定している。だからきっと、少しは主人公の気持ちを推し量れているかもしれないなと、そんなことを思った。
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