Tちゃん

さらば、わが愛/覇王別姫 4KのTちゃんのレビュー・感想・評価

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鑑賞後数日経つが余韻が消えない。すごすぎる。
どのシーンもびしっとコントロールされた隙のない映像、京劇の歌と楽隊が奏でる印象的な音楽。レスリー・チャンの鬼気迫る演技にこの世からはみ出したような美しさ。目と耳は美で満たされつつ、中国近現代史の奔流に乱される登場人物たちの人生の痛みや時代の急激な変換の恐ろしさで、感情がいっぱいになる。
三時間と長めの上映時間だけれど、見終わってみると本当に一瞬の夢だったような、でも確かに長い人生の時間を歩んだような、現実感が奪われたような心地がした。

4K版ポスターのコピー、「夢のような永遠の一瞬を、あなたと歩んだ――」「壮大なスケールと映像美で運命に翻弄される人間の愛憎を描く一大叙事詩」
………いや、ほんとそれな!?よくぞ言った!って感じ。

主人公たちが三角関関係になると横に入ってくる三人目にイライラしがちなんだけれど、今回その役だった菊仙は、強かではあれど実に普通の人間で、時代の波を乗りこなそうと必死で生きている様は健気で痛々しくもある。
そして時に、ライバルであるはずの主人公蝶衣の、唯一の理解者で一番心が近い存在にもなる。とても複雑な人物設定に惹かれた。

役者のビジュアルではレスリー・チャンの圧倒的美が言わずもがななんだけど、奇妙なシルエットとインテリめかした話し方で不気味な存在感のあった袁先生も強く印象に残っている。