映画『ミッシング』
監督・脚本は吉田恵輔。今回も素晴らしい。『空白』『ヒメアノ〜ル』と毎回ズシンとくる傑作を生む邦画では貴重な監督。夫婦のやりとりなど、今回も人と人の繋がりにおける微妙な相違など描くのが上手い。繊細に考えられた台詞もリアルでいい。
主演は石原さとみ。他の俳優陣も上手いが、石原さとみが特に素晴らしい。監督の演技演出も素晴らしいのだと思うけど、ステレオ・タイプではないところがいい。母となってこれが復帰作だけど、これまでと違う才能というか努力。地味目な服装、髪も茶髪に染めメイクも薄めに役作り。なんだけど、やはり垣間見えるのは別格に可愛いという事。
内容はとにかく重い。次々と起きる出来事も重い。もしかして、もしかしてと期待させて堕とされる感覚。
数年前に実際に起きた幼女行方不明事件を基にしているのは言うまでもないが、マスコミの対応、SNSを中心に家族に対する嫌がさせや間違った推理、偏見など改めて考えるきっかけになる。マスコミも違和感なくリアルに描かれていてよく取材しているのかと思ったが、演じる中村倫也は局アナの夫だ。
よく考えるのは、愛する人が死ぬよりも行方がわからないというのは、より辛いのではなかろうか？家族にとっては、結論のない日々が続く。藁にもすがる、そんな思いがよく描かれていたと思う。
地方局の記者役の中村倫也もこれまでとは違うリアルな演技。主人公の弟役森優作は、ポール・ダノ的で、今後、スクリーンぶん殴りたくなるようないやーな奴を演じて欲しい。
事件当日子どもを預け、コンサートに行っていた事を批判され、本人も後悔をする。親は楽しんじゃいけないのか？なんだけど、子どもがいたら諦めたり我慢する事って増えるんだろうな。子は親より幸せに。
ワーナー映画の試写で拝見したが、関係者で満席だった。それだけ注目作。
