絶望の中にも美しさやユーモアを見いだせる作品で、感動しました!
生きる苦しさをこれでもかと描いているので、基本的には苦しいシーンが多いです。
娘が行方不明という状況で、見つからないかもしれないとも思いつつ必死で娘を探す行動を取る沙織里。こちらを演じる石原さとみの演技が壮絶で、素晴らしいです。
また沙織里の弟である圭吾は、幼少期にいじめられていたことから、自分の感情を上手く話すことが苦手で、それによってどんどん悪い状況に追い込まれていきます。
ただでさえ生きづらい特性を抱えた圭吾が、事件によってさらに悲しい状況に置かれていく姿も苦しくなります。
沙織里の夫である豊は、焦る妻と対象的に物語のほとんどの場面で冷静さを保っている(そう努めている)ように見えます。それ故、沙織里から娘への想いを疑われることもあるのですが、豊は豊なりに捜索の活動をしています。
物語の後半で豊の感情が漏れるシーンがあるのですが、私はそこにとても感動しました。
テレビ局の記者である砂田は、沙織里たちに協力をして、取材をしながら娘の情報を募ります。しかし、あくまでもテレビ局の社員である彼は、丁寧な取材で事実を伝えたい、と思いながらも会社の思惑に逆らえず、視聴率を求められます。
このように、沙織里たち夫妻はもちろん苦しいのですが、それ以外の登場人物もとにかく何らかの苦しみの中、人生を必死で行きています。
母、父、妻、夫、テレビ局の記者、カメラマン、など、様々な立場の人物が登場するので見る人によってどのキャラクターに感情移入するかが結構変わりそうだと思いました。
絶望的な展開がひたすら続くのですが、そんな中でも、自然の美しいシーンや、登場人物の掛け合いでユーモアを感じるシーンがフッと入ります。
私はこの表現に非常にリアリティを感じました。
つらい出来事があっても、日常を過ごしていると、自然の美しさを感じたり、つらいと感じてる出来事自体も一歩引いて客観的に見ると「おかしみ」があったり、生きることはこういうことだ、という制作陣のメッセージを感じました。
本作で私が特に好きな点は、主人公の沙織里にはちょっとヤンキー気質(作中では元ヤンとも言われていました)であるという点です。
この元ヤン設定があるおかげで、絶望的な展開でも暗くなりすぎず、パワフルな行動に説得力がでていました。
始めは「不幸な人」という印象でしたが、物語が進むほど、内面が見えてきて沙織里への好感度が上がっていきました。
苦しいシーンも多いですが、「生きていくこと」について考えさせられるとても良い作品でした。