リプリー

ミッシングのリプリーのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.2
吉田恵輔監督は、またしてもとんでもない傑作を撮った、と思う。これほどまでに見ている間中、胃がキリキリと締め付けられ、胸が抉られ、複雑な感情が涙とともに込み上げてくる作品はそうそうない。

一体この地獄はいつ終わるんだろうか、一瞬そんな考えがよぎった。
もちろん終わるはずなどないのだ。
娘の失踪というどうしようもない事実を前に、あらゆる人がそれぞれの立場で悶え、苦しみ、傷つき、傷つけ合っている。
吉田監督はとことんその事実、苦しみを映し出す。
特に石原さとみの演技には、何度も胸を締め付けられた。
テレビ局のバンの窓にすがりつく場面、あの電話で駆けつけてからの顛末、弟とのやり取り、壁の落書き…など枚挙にいとまがない。

見終えた今も少し虚脱状態にある。
というのもこの映画は終わってないからだ。
当事者はもちろん、中村倫也演じるテレビマンも、「もう野球見れねぇわ」といったあの人も人生は終わらない。

どうしようもないけど、本当にかすかにまるですがりつくかのように見せる温もりに希望を感じならが生きるしかないのだ。