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ジュリア(s)のmanamiのレビュー・感想・評価

ジュリア(s)(2022年製作の映画)
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1989年アムステルダム、17歳のジュリアは親元を離れて音楽学校でピアノのレッスンに日々励んでいる。そんな折に起こった歴史的な出来事、ベルリンの壁崩壊。彼女は仲間たちを誘って、その現場に行こうと計画するーー。
というのが最初の分岐点。そこから樹形図をひとつずつ辿るように、優しく美しい音楽を響かせながら、さまざまなジュリア(達)の人生が描かれていく。
3年後には「拾った」ジュリアはベルリンにいる。ママが意外とファンキーに踊る。
「拾わなかった」ジュリアはさらに枝分かれ。「出会わなかった」ジュリアは、なんだかいけ好かない女マリアのアシスタントをしていて、ママに心配される。「出会った」ジュリアの方では、ピアノのケーキが可愛い!
まだまだ人生の分かれ道は続く。「運転した」ジュリアは恵まれてはいるものの、大きなチャンスを逃して取り戻せない年月に苦しむ。「運転しなかった」ジュリアは音楽を、教える側へ。
人間万事塞翁が馬、沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり、禍福は糾える縄の如し。フランス語や英語にもこういう諺あるのかな。
どのジュリアにも、仕事や家族など愛するものがあることが、なんだか嬉しい。境遇によって髪型、メイク、ファッションが違っていて、どれもジュリアらしいのにちゃんと社会的属性などを表現できているのがすごい。
何人ものジュリア(s)の紆余曲折を見せるために、駆け足になる部分もある。それでも、本屋さんでの「銀行泥棒には見えない」などオシャレな会話。ママからの「あなたには才能があるけどほかの道だって選べる」などの心に残る言葉。
そして妊娠を「する・しない・したいけどできない」という女性ならではのテーマ。それらとも切り離せない職種や仕事復帰やキャリアアップといった問題。などなど、要所要所で惹きつけるものがあるので、淡白に感じず入り込んで鑑賞することができる。
それぞれの可能性を全くの別物として切り離すのでなく、テレビ画面、窓ガラス、車、レストランなどですれ違ったり、ある人生で深く関わる人とは他の人生でも出会う瞬間があったりする描写にも、感動を覚える。自分の人生にもきっとそういうことが日々起こっているんだろうと思うし、だからこそちゃんと出会えた人や目の前にいる人に、ますます感謝したくなる。
方途を決めるものは落とし物、列に並ぶタイミング、コイントスと、いつだって不可抗なものばかりで、それならば岐路に立たされたときに自分で何かを選ぶことは無意味なのだろうか。そんなことはないと、彼女がかつて熱意を持って光を与えた彼が、返してくれる。
「生まれは関係ない
人生は自分で作るものだと教えてくれた」
自分の歩いてきた道を誇りたくなるし、これから選ぶ道に自信を持とうという希望を与えてくれる。
最初と最後のモノローグが同じようでいて少しだけ違うのも、作品のテーマともマッチしていて素晴らしいし、その内容にも全面的に共感できる。


人生は偶然の積み重ね?それとも最初から決まってる?運命を決める要素は?行動?選択?出会った人たち?年を取るほど分からなくなる
重要な決断は人生そのものが下すようにも感じる
ささいな偶然が大きな転機となり
ちょっとした出来事が道を選択させる
たくさんの小さな偶然たち
別の道を選んだ自分に時々思いをはせる
誇れる私だろうか?

今あなたに会えてとてもうれしい

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