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ネクスト・ゴール・ウィンズのsnowwhiteのレビュー・感想・評価

4.5
ゲラゲラ笑って観ていられる楽しい映画。凄く面白かったです。

『ジョジョ・ラビット』『ソー:ラブ&サンダー』のタイカ・ワイティティ監督の実話をベースにしたスポーツコメディ。



(ネタバレあります。)
破天荒な性格でアメリカを追われた鬼コーチ、トーマス・ロンゲンが就任したのはアメリカ領サモアの代表チームの監督。

2001年ワールドカップ予選史上最悪の0-31の大敗を喫し史上最弱と呼ばれるチームだ。今まで1ゴールもあげたことのないチーム。

ロンゲンがアメリカ領サモア島に着くとサッカー協会会長が出迎えてくれた。島のテレビの撮影も来ていた。インタビューを受けたがロンゲンは機嫌が悪い。どうして俺がこんな所に来なくてはいけないんだという気持ちが前面に出ている。
飛行場を出たところにはチームのメンバーが歓待してくれた。

車で家まで送って貰ったがノロノロ運転。もっと速く走れと言うが、この島の制限速度は何と時速32Km!なんとものどかな島だ。

案内された家はボロい一軒家。ちょっとカーテンを触っただけでレールごと落ちてしまった。ホテルではないので食事も出ない。
とは言え、大奮発をして(この島では)いい家を用意してくれたのである。

サッカー協会会長は「とにかく1点を。それだけでいい。公式戦でゴールを決めたことが無いんだ。1点でいい。1点取らせてくれ。1点。1点でいい。1点でいい。」

会長が帰った後、家族に電話をしようとするが電話も壊れてて繋がらない。仕方がないのでコンビニに電話を借りにいく。お店の人は愛想よく迎えてくれた。「ああ新しく監督になった人ね。テレビで見たわ。」小さな島なので島中の人達が彼を知っていた。
電話を借りて妻に電話をする。ロンゲンは妻をとても愛しているが何年も前から別居中だ。妻は破天荒過ぎる夫を受け入れられず別の人生を歩もうとしているが、かといって険悪な雰囲気ではなく穏やかな態度でロンゲンに接してくれる。

「ひどいところだ。チームも最悪。寂しいよ。君に会いたいよ。」と妻に愚痴るが、妻は「あなたが立ち直るきっかけになればいいと思ってるわ。」(過去の映像が挟まれる。ロンゲンが、試合中切れて暴れているシーン)

食事をしに近くの店に行くとサッカー協会会長の店だった。チームの色々な費用を捻出するため幾つも兼業しているらしい。出された料理は新鮮な魚のマリネ。何?これ?変なの。と思いながら食べてみるとすごく美味しい。サッカー協会会長に「凄く美味しい!」と伝えると「魚と油。全然違う物だけど混ぜるといい味になる。あなたも混ざってみたら?いい味になるかも?」会長は別れ際にまた言う。「1点でいい。1点でいい。1点でいいんだ。」

次の日チームのメンバーの実力を見る。一人一人の名前とポジションを教えて貰いながら皆の練習を眺める。上手い選手は皆無。だが、脚がとても速い選手やタックルに強い選手とか少しは使えそうな特性がある選手を見つける。

選手たちはやる気がない(様に見える)。のんびりした島なのでやる気がないというより全てがスローでのんびりしているだけなのだが、今まで代表チームやプロのサッカーチームで凌ぎを削ってきたロンゲンからするとやる気がない様にしか見えずイライラする。選手の中には白人に対していい感情を持っていない者もいて本当にやる気がない者もいる。ロンゲンもあまり気乗りせず取り敢えず体力を付けるのが先と皆を走らせる。

次にボールを使って一人一人の実力を確かめるがどれも使い物にならぬ程ひどい。

しょうがないので基礎練習から始める。

(息子が小学生の時にサッカーを習いに行っていたが全く同じ練習方法だった。子供達の方がずっと上手かったよー!笑🤣)

皆の技術を確認しているとそこに遅れてきた選手が現れた…。何と女性!正確には法律上の性別は男性だが本人の自認は女性のトランスジェンダー。未だ手術は受けていない。この女性、監督にとても反抗的。監督も最初は女性に(男子)サッカーチームに入ってプレーするのは無理だろうと思うのだが、プレーをさせてみるとチームで一番上手い。法律上は男性だし、手術も受けていないということで試合にも出られそうなので、遅刻をしないことを条件に指導することにした。

チームの前途は多難だ。だが監督の指導の元、一丸となって練習しやがてワールドカップの予選。

最初の試合の前に相手チームから、女がチームに入ってるぞ。こっちが負ける訳がない。だって女だぜ。ワハハハハ。相手は以前コテンパンにやられた相手。

彼女は不安になる。トラウマが蘇る。そして試合に出ないと言い出す。「私には無理。」「きっとみんなの足を引っ張るわ。」顔を手で覆い動けない。

監督は「君が必要なんだ。君には出来る。今迄の事を思い出すんだ。絶対出来る。君がいないと駄目なんだ。」

監督の言葉に勇気つけられて試合に出た彼女は…。

最後までどうなるのか分からなかった。この映画が実話であることを知っていたからだ。

結果はなるほどそうなるのかーといい意味で裏切られた。そしてもう1つ、いや2つか?驚くことがあった。



いやあ面白い映画だった。ずっと笑いながら観てた。まるでコントかギャグのよう。

サッカー協会の会長が要所要所で監督に声をかけるのが絶妙。あのサッカー協会の会長がいなかったら結果はこうはならなかっただろう。

彼のチームに対する愛や情熱が本当に素晴らしい。チームにかかる費用を捻出するためレストランを開いて運営するなんて誰にでも出来ることではない。サッカー協会会長格好良すぎます。

監督の家に娘から何度も留守電がかかってくる件も別居中の奥さんの件も実に上手く入れてきててタイカ・ワイティティ脚本力が半端ない!本当に面白かった。いい映画でした!
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