大道幸之丞

ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇の大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

現在ゴルチェは2018年にパリを皮切りに「ファッション・フリーク・ショー」という自叙伝的ミュージカルを開催しており日本でも今年東京と大阪で、お披露目をしている。

まずゴルチェのデザイナーとしての隆盛期は1980年代から1990年代あたりだったはずで、彼以降、彼並みにとがったファッションデザイナーは、DOLCE&GABBANAであったりマルタンマルジェラ、バルマンのオリヴィエ・ルスタンなどが登場してきた。

つまり年齢で言えばこの映画に興味を示す世代は50~60才あたりの方々のはずだ。となると「なぜ今頃このコンセプトの映画が公開されるのか。。。」と感じてしまうのも無理はない。

――その理由と思われるのは、モード界隈では昔から同性愛者が多い。日本では三宅一生、高田賢三を始め、むしろストレートが少ないぐらいに噂は多かったが、これまでは時代背景的にそれを公にすることはためらわれた。

本作を見ると、ゴルチェを語るには彼をささえた恋人フランシス・メヌージュの存在なしにはありえない――現代はLGBTQのアクティビティスト達の活動あってか、やっと同性愛者が自己を語ることが適う時代になった様子がある。世界的にも潮流はシンクロしているようなので、ゴルチェも機をみたのだろう。

ごくしぜんにフランシスの出会いと死別に至る経過を語るゴルチェの姿がある。

映画を見る限り幼少時から「自分をゴルチェたらしめた場面」をフューチャーしコラージュしているかのようだ。私はミュージカルが苦手なので本編にはあまり興味がもてないが、オートクチュールのピエールカルダンに師事し自らはプレタポルテで世に出た実は正統派のジャンポール・ゴルチエ。

舞台への取り組みも24時間浮かんだアイディアを盛り込まずにおれないほど熱を帯びて妥協ができない質なのがわかる。彼のデザイナー隆盛期はこんな感じだったのであろうか。

少し驚いたのは1980年代に彼が「最先端のデザイナー」と評される事に違和感があったことだ。感じるままを出していた彼にとっては決して「先端を追う」などとの意識はなかったのだろう。

彼の源を知るには格好の作品と思う。