花俟良王

ライド・オンの花俟良王のレビュー・感想・評価

ライド・オン(2023年製作の映画)
3.5
ジャッキーに思い入れがないとなんとも締まりが無い凡庸で古臭い物語に思うだろう。ジャッキーは控えめなアクションはするが、ダブルが目立つ。スタントマンの矜持を描くのにあからさまなCG多用で興醒めもする。そもそもスタントマン讃歌ならば馬の話は余計だったのではと思う。

しかしだ。ジャッキーに思い入れがある人が観るとぐっと来るはず。ダブルを使っても求められるアクションをする。幼稚とさえ映る様々な映画の撮影風景も、ジャッキーが色々な衣裳を着てくれる。そして過去の映像を惜しげもなく使うサービス。あれを見せられたらもう何も文句は言えない。若かりし頃のスタントをジャッキーがしみじみ観る切なさ。それだけで今までありがとうと言いたくなる。確かに物語はとっ散らかって下手くそだ。しかし、そもそもジャッキーの映画の物語はいつも大したことはない。アクションと笑顔、そして優しさがあればいいのだ。

『ライド・オン』はジャッキーに興味がない人には薦めないが、これまで彼の恩恵を授かった人には控え目に薦めたい。しばし時間を差し出し、心のなかで労いやお礼を言ってもいいと思う。
花俟良王

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