Masato

首のMasatoのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.9

北野武監督最新作

戦国版アウトレイジと揶揄されていた本作。アウトレイジシリーズは未見だが、れっきとしたヤクザ映画文脈で作られた戦国時代劇だった。本能寺の変を軸として織田信長の膝下にいる大名たちの天下を狙った裏切りの物語。

タイトルにある通り斬首がやたら多いという評判を海外の映画祭で聞いて期待値がかなり上がっていた。確かに近年の時代劇では見られない圧倒的にリアルなグロテスク描写で、血の気が引いてしまうほどに死というものを見せつけられるのは良かった。しかしながら、死が過激な描写と共にどっと押し寄せてくる恐怖というものは序盤で鳴りを潜めてしまい、その後はそれぞれのヤクザ映画的な思惑が飛び交うものへと変わってしまうのは良くも悪くもで、個人的には少し残念だった。それと皮肉的だが投げっぱなしの終わり方で全体的に散漫。

北野武ならではの残酷さと笑いが表裏一体となった面白さというものは随所に存在はしていて、死というものをユーモアと共に非常にドライに描くからこそ怖さも同居してるのは良かったが、基本的にやっていることは見たことのあるような会話劇の連続で徐々にトーンダウンしていく。グロ描写も中盤あたりは無くなっていく。個人的には、序盤にふんだんに盛り込まれていた過激な描写や死というものの恐怖を全編にわたってやって欲しかった。その点で中村獅童演じる茂助のキャラクターはものすごく好きで、大局的な物語ではなく、彼を重点的に描いてほしかった。

ヤクザ映画の文脈なので自然と古臭さはある物語であるが、かえって今ではなかなか見られないような展開やビジュアルで新鮮だった。なんだかんだで挑戦的なスタイルなので次回作も期待したい。
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