6年間待ちに待った北野映画😭😭😭
信長・光秀・秀吉・官兵衛そして家康。大河ドラマの主役をズラリと並べた、まさに群雄割拠の戦国オールスター。
冒頭10秒のファーストショットからいきなり映画とテレビドラマの圧倒的な違いを見せてくれる。大河ドラマでは到底不可能な映像表現。そのリアリズム、ワンカットにかける時間と予算、倫理規定の違いなど映画館で映画を観ているという気持ちにさせてくれる。
日本の歴史上、最も有名な史実を基にした戦国一大エンターテイメント。だがこの映画は、誰もが知る歴史上の武将たちを偉人としてではなく、狂人として描いている。高潔な人物は誰一人として登場しない。
織田信長はこれまで描かれたなかで、最も狂気に満ちている。かつてない程にハイテンションで非道の限りを尽くす。まさに最低で、最悪で、最狂だ。
羽柴秀吉は自らが天下を取ろうと信長と光秀を陥れ〝本能寺の変〟を策略。この日本一の出世男を絶対に信じてはいけない。
徳川家康は、常に用心深く飄々として抜け目ない。天下になど興味はないと言いながら、敵も味方も騙くらかして虎視眈々と機会を伺う。
明智光秀は忠義を仇で返され面目丸潰れ。身も心も尽くして忠誠を誓った信長への愛は、やがて深い憎しみへと変わる。
互いを出し抜き、信長の跡目相続(天下統一)を狙う武将たち、彼らの間を駆け回る芸人、成り上がりを夢見る百姓、さらに坊主や忍者が入り乱れながら、それぞれの野心と欲望が交錯する。
構想30年という監督北野武の根底にあるものは、過去に映画や大河ドラマで描かれてきた〝戦国武将英雄伝〟に対するアンチテーゼだ。
〝天下統一〟という名の欲望、いや私利私欲を満たすため、〝殺戮・強奪・放火〟という非道の限りを尽くしてきた〝狂人〟どもの実像を、北野映画得意の乾いた〝バイオレンス〟と毒のある〝笑い〟で暴き出す。
更に既存の戦国映画やドラマでは描かれてこなかった〝裏の戦国史〟もしっかりと描くのは、たけしが昔からネタにしていた、嘘ばっかりの映画やテレビへの痛烈な批判だ。
本当は、みんなも知っているのに何かに忖度して、誰も言わない・描かない事を初めてテレビで言ったのがビートたけしだ。
性的嗜好・人種ジョーク・障がい者やブスいじり。武士の道理や様式美を徹底的に笑い飛ばす。つけたあだ名も〝ハゲ・サル・タヌキ〟今ではどれも腰が引ける話題で、誰も手を出さなくなった〝ブラックな笑い=たけしの笑い〟を堂々とスクリーンに映し出すのは痛快だった。
事前の宣伝などから想像してた以上に笑いの場面が多いのには驚いた。まさか戦国時代にたけしの〝バカヤロー〟が聞けるとは😅
戦国という狂乱の時代を生き抜くために、信長も秀吉も光秀も家康も皆んな自分の欲望にまっしぐらだ。
そんな人間の業や欲、裏切りにまみれた武将どもを一段上から冷ややかに見つめているのが、他ならぬ芸人というのが、いかにもたけしらしい。
木村裕一が演じた曽呂利新左衛門の中には、明らかに芸人としてのビートたけしが入っていた。
彼の言葉を借りれば所詮 戦国武将など、どいつもこいつも〝碌な奴〟じゃないという事だろう。ちなみに偶然だが、このレビューは678本目。〝ロクなヤツ〟が出てこない映画を語るに相応しい番号だ😅
6年間待った甲斐があった。日本の歴史上、最もエキサイティングな時代を剥き出しの欲望と共に生きた〝最低の男たち〟を、大好きな監督が描いた〝最高の映画〟しばらく余韻に浸りたい😊😊😊
※日本人が尊敬する歴史上の人物
第2位 織田信長
第5位 徳川家康
第9位 豊臣秀吉
信長は、あのマザー・テレサを抑えての堂々の第2位です😅
日本中が大河ドラマや映画・歴史小説にいかに騙されてきたかがよくわかる。
この3人の命令で一体どれだけの人の首が飛んだのやら😭
参考サイト
https://mediaexceed.co.jp/monitoring/6854/
※本作は〝本能寺の変〟さえ知っていれば、歴史について深く知らなくても十分に楽しめますが、荒木村重、黒田官兵衛、服部半蔵や家康の伊賀越え、秀吉の中国大返し、山崎の戦い等について事前に知っておくとより楽しめると思います😊
以下〈ネタバレアリの 余談ですが〉
この映画が構想30年と本人が語っているように、手元にある雑誌「CUT」(1993年7月号)では、「沖縄ピエロ」=「ソナチネ」の次回作の構想としてこの映画のプロットについて語られている。
そこには時代劇でホモやっちゃう話や、時代劇のお笑いだと出来が悪くてもバレない😅話。
更には、自分が秀吉を演じ高松城を水攻めする、城主が出てきて切腹するなどのイメージが語られており本作にそのまま取り入れられていることがわかる。
〈更に余談ですが〉
映画「浅草キッド」の監督もした、大のたけしファンの劇団ひとりが、一場面だけ映ります。ほんの一瞬、庶民の中の1人としてなので見逃さないように😊