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パトリシア・ハイスミスに恋してのgeminidoorsのレビュー・感想・評価

4.0
個人的にも好きな作家の、今迄まるで知らなかった内容が全編に渡り淡々と映されていた。
毒親と最後迄折り合いをつけるに苦心した処は私もそうなので、好きな作家だけになんだかとても切なくなった。



本の話としてー
当作家はハヤカワ・ポケット・ミステリーで読み耽った。あのシリーズは独特のサイズでなんとも言えない魅力があった。
知る御方には伝わる感覚だと思うんだが…
昔の装丁デザインが懐かしい。
現在の何処となく小綺麗でデジタルなデザインとはまるで違った。
色彩トーンも素敵だったし、使われている絵は印象深い抽象画だったのを思い出す。
かなりコレクションしていたのに、各地転々と引越す際に処分してしまったのが今となって悔やまれる。



映画の話としてー
初鑑賞以来30年以上が過ぎて尚"アメリカの友人"は、個人的なベストムービーのトップの座を揺るぎなく譲らないのだ。
ヴェンダースが実は一番チカラが漲っていたと思われる頃、ハリウッドから離れて久しいデニス・ホッパーが西洋を彷徨う中、まるで隕石衝突の様に産まれた作品だ。
ちなみに前述の作品はハイスミスの三つの別作品をミックスした脚本だったと思う。
作品自体の感想は当映画のレビュー欄に記してあるので宜しければ読んで頂きたく。

今回(或る視点からの独編ではあるものの)或る意味ではドキュメント仕立ての本作を観て、つくづく前述"アメリカの友人"に出演していたトム・リプリー役デニス・ホッパーの台詞や挙動の一つ一つは、まさしく原作者パトリシア・ハイスミス自身の投影だったのだな〜と感慨深く思い至る。


両人共に、ドロンとした大きな瞳がどことなく血走って澱んでいる様で…
然しその瞳孔はいつも何を映していたのか…


どんな人と付き合おうが、
どんな国に暮らそうが、
永遠に満たされない哀しみを見つめていたのだとしたら…


そうだね…
そうして、我々が作家の昇華作品にお目に掛かれたりするのだね。
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