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聖地には蜘蛛が巣を張るのgeminidoorsのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
4.0
ひたすら終局場面の現実というか、犯人側家族の行動や言動が悲しく、下手なホラーよりある意味で怖く、薄ら寒くなった。
事件の根源的な奥深い問題は根強く、決して未来に無くなりそうにない点が一番怖い。
ハリウッド的なサスペンスやクライム&サイコ感を求めるなら観ない方がいいかも。
ワタシも初め的が外れた感あり、最後まで観てみたら予想外だった。

何処の国にもある宗教を隠れ蓑とした、男尊女卑や権威と民衆統率の為の、ご都合主義な綺麗事や戒律。或いは暗黙の了解。
またそれが、実はニンゲンの遥か過去からの営み、つまりは生きてゆくヨスガでもあったのだろう現実。
それをよくぞこの地を舞台に、短時間の少ないプロットで上手く描いてあると思った。
2022の作品で現在が舞台なのだから、国や地域が違えばこんなにも違うのかとも思う。

と同時に、見方を変えればー
"身を売らざるを得なかった弱者"に対しての封印的な沈黙や、対して"名を成したい"とか"何かデカい事を成し遂げたい"といったオトコならではの鬱積した我儘なんてのは、やもすれば野望とか夢なんて捉え方で認められてしまう訳でもあり…
表層に現れてくる目や耳にする事件は違っても、それらは多かれ少なかれ何処の国や社会にだってたしかに有る問題なのだと気付かされ…



観終えてから、ポスターやチラシのデザイン= 絨毯に織り込まれた女性の絵が、一層じわじわ響いてきた。
この地の産物でもあろう手業の込んだ絨毯…
そこに刻まれる柄や模様…本来、織り込まれ意味するものは何なのかーを想像した。
本来、喩えばキルトや反物や布に織り込まれる柄や模様は、長い歴史で育まれた教えや祈りの象徴であったりする。

映画では、被害女性らは被っていたビジャブに依り息を止められ、その絨毯に包まれた。
つまりは、この地の脈々と流れる歴史にこそ足裏で潰され、闇影に葬られてきた女性を叫ばせる絵柄で表していたのかも知れない。


もう一度は観る元気が沸かないだろう。
それぐらい、"ボーダー"を観た際とは又違った感覚のローブローパンチを受けたのかも知れない…
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