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キリエのうたのshizuqのレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
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アイナジエンドの声には、罪を赦してくれるような癒してくれるような効果がある。このストーリーは、彼女の声を引き立たせるためのものなのだなと思った。

ルカ、夏彦、イッコがそれぞれ背負ってきた過去はとても悲しくとても辛い。でも、知ってか知らずか、互いの存在により作用しあい前を向いていく姿が印象深い。

夏彦はルカに再会して、ダムが決壊したかのように涙する。それは彼の過去を、彼の背負う悲しみを共有し、本音と弱さを見せられる相手とやっと再会できたという安堵からだと思った。その涙のシーンがとってもよかった。あと北斗くんやっぱり声がいい。

イッコは結婚詐欺に問われるが、形は違えど、結局祖母・母と同様に「女であること」を使って生きているのは皮肉。イッコこそ、色々あったのだろうけどキリエという存在が彼女にとって大きなもので、彼女をプロデュースし、彼女の成長を近くでみていることに喜びを見出していたのだと思う。

特にキリエとイッコの特別な関係性は、震災後人前で踊ることのなかったキリエが彼女の前だけで舞う海岸のシーンによく表れている。キリエはイッコに出会って、自分を少しづつ表現できるようになった。そしてイッコもまた、キリエの声や表現に癒され生きる意味を得ていたのだと思う。この時にふた粒ばかり流す広瀬すずの涙が綺麗で、「なつぞら」で偶然観て衝撃を受けたあの涙と同じくらい感動した。

岩井俊二の映像美とストーリー、アイナジエンドの引力に魅せられました。岩井俊二の映像の白って神聖で特別な気がする。
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