にく

キリエのうたのにくのネタバレレビュー・内容・結末

キリエのうた(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

『ラストレター』ぶりの岩井監督作品。詩的というか、独特の間や空気。ドンピシャではないんだけどなんだか惹かれて観てしまう。
時系列と場所が入り組んでいるけど分かりやすく、こんがらがることはない。でも体感が長い…と思ったら3時間で納得。
黒木華、北村有起哉、矢山花(るか子供時代)の3人が支えている感じがした(敬称略)。
七尾旅人さん演じるストリートミュージシャンとのデュエット(音を口ずさむというシンプルな心からの幸せ)シーン→教会でのるかのシーン。
地震後、愛情深くるかを抱きしめる希のシーン。
どこへも宛てのない贖罪のような感情を持ち続ける夏彦。キリエ(るか)のライブ参加後のシーン。
すずちゃんの演技が好きですが、本人のインスタでも「難しかった」とあったようにイッコ(真緒里)という人間になんだか追いついてないように見えた。脚本的にも余白の多そうな人の印象なので違和感はなかった。地に足のついた少女が、大人や社会に振り回されてしまったようなひと。「こんなのかすり傷」
バクバクと心臓が鳴る描写がいくつかあり、でもその先には哀しさとあまりに広く深く果てしのないものを感じました。とてもニュアンスだけど。
社会と法と人と感情と。なにが正解なのかは分からないことばかり。
終盤はなんだか冷めてしまいそうにもなったけど(路上主義ライブ、ちゃんと許可とってーと思った)、映画でくらいはこういうものでもいいのかもしれない。なによりもアイナ・ジ・エンド本人だと感じるほど圧倒的なパフォーマンスが見られてよかった。惹きつけられました。
宙に浮いているようで、鮮明なようでくすんでいるようで、地に足のついてそうでいてどこまでも映画である作品。
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