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キリエのうたのろのレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
5.0
期待以上だった。
大衆受けするような映画なのかなって、勝手に期待せず、でも過去作品は依存するほど好きなので。観にいった。

公開前から、アイナジエンドさんの歌声は耳に入っていたし、岩井監督のYouTubeを観ていた。

オフコースの「さよなら」
さよならで始まるのかぁと思った。
パパがよく聴いていた。

いつもは、そろそろ終わりへ向かってるかなと時間配分が気になるけど、178分全ての時間を堪能できた。

さいご、憐れみの讃歌を歌い終わる時、あぁ終わる。現実に引き戻されると覚悟した。
けど、そこからまたオフコースの「さよなら」を優しく聴かせてくれた。

優しく、物語を終わらせて現実へ戻してくれるから、
岩井監督の映画が好き。

何より衝撃的だったのは、ルカ役の矢山花さんの演技。
教会で上を見つめ、表情を変えず、瞳が歪み始め、涙が滲み、涙を流していた。
素晴らしい演技だった。
全ての意味を汲み取れるだけ汲み取り、私も涙ぐんだ。
泣く時って、嬉しくても悲しくても顔全体が歪むと思ってた。
ただただ涙だけが流れるのは、感情が現れないくらい相当な何かがあった時だと思。
それを、11歳であの涙の流し方をするなんて。
感銘を受けました。

キリエが、なつひこにアタックするテクニックも素晴らしいよね。
手を繋いで下さいとか、先輩が恋人になって下さいとか、
勝手にキスするのとか、
我慢できないですなんて、思春期に言われてみろ。
私も言ってやりたかったぜ。
素直に、思いの丈を、キリエなりに、先輩に伝えていたあの電話も、とても良かったな。
他の誰でもない感じ。
好きになっちゃうな。

なつひこの、ダメなやつ感も堪らなかったよ。
男ってそうだよな なんて。
彼女の家に初めて行って、みんな誰だよ状態で、急にお祈りし始めて、思わず手を合わせちゃう。可愛い。
キリエがいざって時、脳天気な話をしちゃうの、分かる。
地震が起きて、電話で状況を伝えあっている時、夏彦ずっと、壁のとこに立ってて。
うろちょろも出来ず、ただそこで、彼なりにキリエを思い心配して。
でもキリエは2人の愛について話しちゃうの。
これは喧嘩になりかねないけど、そんな時こそ、愛について語りたいのは凄く分かる。

ベースとして、みんなの人生に震災があって、
こんな人たちが、本当にいるかもしれないんだって我に返った。
近くにいた人が、いなくなって。
亡くなった可能性がかなり高いけど、遺体さえ見つからず、惨い被災地だけがある。
残された人にはその後の人生があって。
急に、恋人がいなくなったらどうするだろう分からない。
どれだけ辛いんだろう。
でもその中でも綺麗に見える時があって。
当事者の人生は悲しいだけじゃなくて綺麗な時もあるし、楽しい時だってある。
観ていて苦しい時も沢山あるけど、儚くて綺麗な時も沢山あるから、
また観たいと思った。


追記
・真緒里の元ネタは、"ハルフウェイ"で仲里依紗演じるメメ。
20分目くらいでシャボン玉飛ばしてるシーンで語る身の上話。
そこから広げたキャラクターが真緒里。
・イッコ役は40歳くらいの役者でもよかったが、広瀬すずちゃんという話になり、
イッコと真緒里を同一人物にして演じてもらいたいという流れ。

・黒木華さん演じる大阪の先生は
少年ドラマシリーズ、"兎の目" 金沢碧のイメージ。
・涙を流すポイントは、100%流す。
(大島育宙さんYouTubeより)

10/20 @イオンシネマ
10/25 ティーチインイベント@バルト9
11/3 夫を連れて@イオンシネマ
12/1 最後かな@109シネマズプレミアム

4回も映画館で観た映画はこれが初めて。
しかも最後の映画館として選んだのは¥4000の109シネマズプレミアム。
映画の日に最後に¥1000で観ようかななんて思ってたけど、109を知って、これは、この映画館で観ても悔い無し、寧ろこの作品でこの映画館を体験したいと思い鑑賞。
映画館にも大変感動しました。
まず歌舞伎町タワー9.10階に位置する存在。
歌舞伎町タワースゲー。現代のTHE歌舞伎町。
ギラギラうるさい。
9階入口から入ると、旅館の香り!高級感!
広々とした待合スペース。
ポップコーンも飲み物も飲み放題。
御手洗のライト、帽子かぶってました。
席もかなり広く、リクライニングシートに感動。
スクリーンもかなり大きく、これぞ映画館。
3時間なんの苦痛もなく過ごしました。
上映中も時々、刺激にならない程度の清潔感溢れる香りがファっと香って感動。
どの映画館でも音割れしていた路上主義のフェス場面は、音割れすること無かった。
音響がいいというか、そこにいた気がする。
画面の中にいた気がするから、音がいいというか、なんなのか、不思議体験。
素晴らしい映画館だ。
素晴らしい映画館で観るべきであった映画。
岩井俊二さんの映画をここで観れて良かった。
ろ