うーぱーるーぱー

キリエのうたのうーぱーるーぱーのレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
3.8
1回目、2023/11/25
2回目、2023/12/6

同監督作品「リリィ・シュシュのすべて」を観た時、コロナ禍の誰にも会えない窮屈な時期だったこともあって暫く気持ちが沈んだ記憶があったから、若干の緊張感を持ちながら今作品を鑑賞した。

自分の中の「誰にも触れないで欲しいけど心の奥底では触れて欲しいと願っていたりもする部分」に容赦なく届いてしまう、アイナの危うさのある歌声が好きなので、一ファンとしては歌唱シーンが多く嬉しかった。1曲目から刺さりまくってぼろぼろ泣いてた。

1回目観た時は、行ったり来たりする時系列を整理しきれずに消化不良だったけど、2回目は登場人物それぞれのバックボーンを知ったうえで言葉を受け取ることが出来て、より一人一人に人間味を感じて、自分と共通する部分が見えた。

2回観て印象が変わったのは、夏彦と逸子。
夏彦は最初、弱々しくて今にも決壊してしまいそうに脆くて「この先の人生でどうか報われて欲しい」と願っていたけど、だんだん“狡さ”や“自己保身”が見え隠れして「ああこの人が1番人間らしいのかもしれないな」と思った。
絞り出したような「赦してくれ」が苦しかった。夏彦は自分自身を赦せたのかな。
松村北斗さんの演技、もっと観たい。

逸子は、奇抜な見た目も相まって現実離れした不思議なキャラクターだなぁと思っていたけど、北海道にいた真織里が逸子という名前を手に入れるまでを想像すると、その気概にかっこいいとすら思った。
逸子のラストからの、真織里と路花の雪の中でのシーン、すごく良かった。

そして黒木華さんの安定感というか、なんだろう。作品が締まる存在というか。
そんなに出演シーンは多くないけど、それでもさすがの説得力、存在感だった。

あと突然の粗品登場には笑ったけど、もしかしたら救われたのかもな。
ありがとう粗品。