面白かった。
16世紀イングランド、ヘンリー8世の6番目の妻、キャサリン・パーが主人公。
もう一人の影の主役は継子のエリザベスと言っていいと思う。後のエリザベス1世で、彼女が本作を引き受けて語り手となる。
数少ないエリザベスの登場シーンは、どれも印象的。
キャサリン・パーの愛情と庇護を受け、教養や探究心、客観性を身につける様子が映しだされる。まだ子供(13歳)の彼女が要所要所で登場し、父ヘンリーと敬愛する継母キャサリン・パーの動向や、宮廷の権力争い、宗教上の抗争を、静かにかつ心震わせながら見ている。
演じたのはジュニア・リース(Junia Rees)という役者さんらしく、如何にもイメージするエリザベス1世という容貌で眼差しが強い。(あまり情報がないのが残念だけど)
本作の冒頭で(正確ではないけれど)「歴史は男と戦争で出来ている。その他の事は想像するしかない」というような文が出て来る。
キャサリン・パーも再婚後、暗殺されたとか、処刑されたとか、産褥熱で亡くなったとか色々な説があるようだ。ちょっと検索したら色々出て来た。後は想像するしかない。
膨大な「その他の事」も面白い。「男と戦争」で既に年表が埋められているなら、この「キャサリン・パーの仮説」のように、線に厚みを出してあげようじゃないの。
信念の人、アン・アスキューの視線も印象的に描かれる。
原作はエリザベス・フリーマントル著『クイーンズ・ギャンビット』(2013)とのこと。
全てを知るのはエリザベスのみ、という仮説。
絵画のような光と陰影に富んだ撮影と、衣装美術も素晴らしかったです。