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PERFECT DAYSのhasemaのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.2
TOTOとUNIQLOのトイレに関する事業の一環として作られた映画、と聞いて、うーん、微妙だなあと思いつつ見た。主人公の設定がトイレ清掃員ということで、やりがい搾取に繋がってしまう危惧も感じつつ。

で、見た後の感想は、

いい映画でした。面白かったです。

新しいトイレが登場しすぎなとところと、主人公の設定がちょっとベタな所を差し引いても、同じ毎日の繰り返しでも退屈せず、むしろどんどん引き込まれていくのは、さすがヴェンダース。そして、さすが役所広司。

最後の役所広司の顔の長回し。これを見るだけでも価値があると思う。いかんせん、英語不得手の自分なので、英語の歌の字幕が欲しかったです。そしたら、あの表情がどのフレーズにリンクしているのか、もっと胸にきたに違いない。同行者は、あそこで、主人公は英語が堪能だということがわかる、と言っておりました。悔しい。

主人公はおそらく傷ついた過去があり、大きな決意をして今の生活を選んだのであろうことは示唆される。
だからこそ充足したパーフェクトデイズが送れるんだよね。他の選択肢がなく清掃員をせざるを得なかった場合と、同列にするわけにはいかないだろう。「暇と退屈の倫理学」ではないが、主人公は余暇の過ごし方を知っている人だし。
パトリシア・ハイスミスや幸田文の価値を知っている人だからこそ、ささやかな幸せを大切にできるというものだ。

現代社会に置き換えて、どんな仕事でもこんなふうにささやかな幸せがあれば充足できるよっていう「やりがい搾取」に繋げちゃいけないよな、と思う。

とはいえ、それは、こちらが気をつければ良いだけのことで、ヴェンダースはいつもそういう人たちの側から映画を作る人だと、町山さんもラジオで話していた。

この映画音楽のサントラ版欲しいです。
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