グラッデン

PERFECT DAYSのグラッデンのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.8
ヴィム・ヴェンダース監督の最新作。渋谷区にある公共トイレのリノベーションプロジェクト『TOKYO TOILET』の清掃に従事する男性・平山の日常が綴る物語。

物語を通して描かれる平山のルーティンは大きく変わらない。周囲に巻き込まれなければ、自分が決めたルールを、自分のペースでこなす。そんな平山の身に起こるかもしれない事件の衝撃に備えていたが、多少乱されても、平山の日常はしばらくすると取り戻される。

このような物語の展開には、ジム・ジャームッシュ監督の『パターソン』を連想した。しかし、同作品でアダム・ドライバー演じるバス運転手は寡黙ながら詩で言語化したことに対し、『PERFECT DAYS』で役所広司さんが演じる平山は言語化しない。平山は何を見て感じていたのか?その答えが判明した時に唸らされた。

そうした平山の視点から描かれる東京の街並みは、浮世離れしたものではないが新鮮で美しい。それはニーチェの永劫回帰ではないが、現在に歓びを見出す視座に基づくものかもしれない。