おじさんが決まったルーティンでトイレを掃除しているだけなのに不思議な映画。セリフらしいセリフは少ないのに、毎朝玄関先で空を見上げる役所さんの表情だけで、こんなにもアクセントが付くものなのか。
外国人監督が描く日本というのは、日本人が誇るものであったり、忘れていたものだったり、存在しないものだったりと様々。正解かどうかは置いといて、島国の外の人たちが持つ日本観って面白い。
日本のトイレって凄い。外観が謎のオブジェすぎて初めてその場所にくる人はトイレだと気付かないというのは賛否がありそうだけど(笑)
ほぼすべてのシーンにいる役所さんの存在感はもちろん、同僚の柄本時生さん、その恋人アオイヤマダさん、姪っ子役の中野有紗さん、居酒屋ママの石川さゆりさん、ママの元夫の三浦友和さんらもそれぞれの出番は多くないものの、役所さんと関わる限られたシーンで、彼らの生活の一端が垣間見えるのが興味深い。
ちなみに小津安二郎の映画は一つも観たことないのだけど、本作のヴィム・ヴェンダース監督のように、影響を公言する監督は多いので、何となくこういう作品を撮る人なのかなというイメージが勝手に出来てきたのが面白い。
昔は外国から見て日本は世界一撮影許可をとるのが難しい国だったらしいけど、ここ数年は日本でロケしたハリウッドの映画とかも増えてきた気がします。
🏆ゴールデン・ダストダス賞2023🏆 作品賞 前編
※超長くなってしまったので、2回に分けようと思います、今回前編。
2023年総括、書いてなかった作品のレビューを簡単に済ませるついでに、今年の優秀作品を独断と偏見と贔屓で選び自己満足に浸ることを目的とするゴールデン・ダストダス賞2023。
今回はラストの作品賞、年間ベストの形式にします。これを書いている今現在の心境での順位です。個人的に1位から3位くらいまでは不動だと思いますが、それ以外は日によってコロコロ変わるかもしれません(笑)
☆作品賞(年間ベスト) リスト 10位から6位+特別賞
10位『僕と幽霊が家族になった件』
台湾映画。東アジアの古くからの風習“冥婚(生者と死者の結婚)”を題材にしたアクション・コメディ。交通事故で無くなったゲイの青年と冥婚することになってしまったノンケの刑事が、彼を成仏させるために轢き逃げ犯を探すことになる。ノンケにもゲイにもスケベにも刺さる良作だと思います。
9位『ゴジラ-1.0』
持論、“ゴジラ映画とは、ゴジラが東京に来て、瓦礫を散らかし、何発か熱線を吐き、クソして帰って寝れば成立するものである。”日本が世界に誇るスーパースター ゴジラ先生の70年記念作品。本作と『シン・ゴジラ』はある意味ではどちらも初代ゴジラのリメイクといえるけど、アプローチが対照的なのが面白いです。
8位『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』
ジムの会費、保険プラン変更、教習所代、そして商売敵と世知辛い世の中。殺し屋女子二人組の奮闘記。劇場鑑賞した時はまあまあ好きかなくらいの感想だったものの(今レビュー見返すと割と文句多い)、最近再鑑賞したところ何故か凄く面白かったので、順位が大幅ジャンプアップしました。
7位『イコライザー The Final』
奇跡や祈りは善人の為だけの言葉にあらず。デンゼル・ワシントン主演、ロバート・マッコールさんのイタリア滞在記。マッコールさんも寄る年波には勝てないのか、今回はアクションは控えめながら凄みは衰えず。『マイ・ボディガード』以来のダコタ・ファニングとの共演も感慨深いです。
6位『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』
ファンタジーの世界観の作品は普段それほど観ないので期待値はそれほどなかったのですが、何のノイズもなく楽しめるという意味で2023年最高の純エンタメ作品だったと思います。個人的には最近ハリウッドの娯楽作品には期待外れなものが多かったのですが、これは心から続きが観たいと思える快作でした。
特別賞『Wave Makers 選挙の人々』
ドラマ作品のためこのランキングには含みませんが、満点をつけたのでここに載せます。台湾のNetflixオリジナル・シリーズ、選挙活動を裏で支えるキャンペーンチームにスポットを当てた社会派ドラマ。死刑制度や不倫、同性婚、環境問題、移民問題、ハラスメント、リベンジポルノなど真面目な題材を独特の熱量と緩さのバランスで描かれてます。
後編へ続く…