不健康運動

PERFECT DAYSの不健康運動のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.1
解像度の高さを楽しむ映画だった。

清掃中のトイレに入るシーンだけでも、
・何も言わずズカズカと入り、挙げ句の果てに清掃中の立て看板を蹴っ飛ばす酔っぱらい
・「あっ……」と一言言った後、無言の圧力をかけ、一応申し訳なさそうにトイレに入るおばちゃん
・何度も詫びながらトイレに入るタクシー運転手
と、言動が全て異なるのがめちゃくちゃリアル。

また、子どもをトイレから出してあげた平山に礼すら言わず不審者扱いし、子どもの手をお手ふきでひたすら拭くお母さんなど、トイレの清掃員に意識的な無意識のうちにか偏見を持っている姿を描くのもうまいなと思った。

そして極め付けは、大瀬良から丸がタイムリーを打ち、中田翔がホームランを打つのを見たおじちゃんが「金で勝利を勝って何が楽しい!」と言って、野球中継を消したシーン。
東京にいるのかは断定できないけれども、少なくとも広島にはこういうおじちゃんがうじゃうじゃいるぞ!

キャスト陣のお芝居もすごく良かった。
事前情報を仕入れずに見に行ったので、レコ屋の店員の松居大悟監督にはびっくりした。
まさかの俳優起用かい。
でも、サブカル兄ちゃんの役はとてもハマっていた。

居酒屋のママ役の石川さゆりさんも良かった。
最初「この人の顔どっかで見たことあるんだけどなあ……」とモヤモヤしていたが、歌唱シーンで「あっ!!この声!!!石川さゆりだ!!!!」と、やっと気付いた。

無知で知らなかったが、アヤ役のアオイヤマダさんは、本業はダンサーらしい。
俳優を本業としていない方々のキャスティングおよびそのお芝居が光る作品だなあと思った。

そしてもちろんやはり、主演の役所広司さん。
何と言っても、特にクライマックスの表情は圧巻だった。

正直鑑賞前は、「カンヌ獲ったし見に行っとくかー」程度のモチベーションしかなかったのだが、こんなに長々と感想を書くことになるとは。

2024年最高の映画始めだった。