役所広司演じる主人公の日常を追体験するストーリー。『東京物語』等本作に影響を与えている昔の作品を見ていない自分にとっては、すごく新鮮な演出に見えて、非常に印象的だった。
最近は実写もアニメも説明が多すぎてげんなりしていたが、この作品には説明は疎か、台詞もほとんどない。すごく気持ちよかった。感情を体で表現しきった役所広司に感服、受賞も納得です。
「トイレ清掃って実はこんなに魅力的で立派な仕事なんだよ～」という啓蒙映画として作られてたなら評価しない。たぶん、トイレ清掃の仕事はもっと過酷。だいぶ脚色されていると思う。
そうではなくて、"主人公にとっては"トイレの清掃員をしながらアナログな生活をするのがこんなに美しい日常に映る、という視点で描かれているのだと思った。
くわえて、より重要なのは、むしろ日常なんてのは誰もが繰り返しのように感じるものなんだけど、その中でどれだけ変化を見つけられて、その変化に好奇心や興奮や喜怒哀楽を感じられるかこそが、生きるということなんだと、そういうことを投げかけられているんだととらえた。
昔の方が良かったとは思わないし、主人公の質素な暮らしに憧れは持たないけど、今よりアナログな時間（デジタルデトックス）を増やして、日々の変化にもう少し意識的に目を向けてみようという気になった。
設定3/脚本5/役者6/映像音楽5/個性4
