まりりんクイン

PERFECT DAYSのまりりんクインのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.7
毎日が同じ事の繰り返し
しかし同じ瞬間は2度と訪れない
その事をカメラワークとカット割だけで表現する鮮やかさ。
同じ事の繰り返しなのに、常に画面が新鮮で見飽きない。
こんな感度で毎日を過ごしたい。

主人公の平山は恐らく父親との確執のせいで、人間関係に大きなコンプレックスを抱き、人との関わりを避けて生きる道を選んでいる。
キャッチコピーにあるような「こんな風に生きていけたなら」という素朴で素敵な生活の裏には「こんな風にしか生きれなかった男の悲哀」がある。ラスト、三浦友和に「妻を頼みます」と言われた平山は、自分にそんな度胸も器も無い事を自覚しているように見える。
「feeling good」を聴きながら、必死に今の生活が素晴らしいと納得しようとしている平山の姿は、なんとか毎日に納得して生きている自分と何も変わらないように思えた。

たしかに、平山は家計的にはかなり余裕があり、数ある選択肢の中からトイレの清掃員という職を選べる立場にいるし、その清掃業も五輪に合わせて設置されたデザイナーズトイレのみを扱っている。実際のブルーカラー労働の方からすれば、甘すぎる夢物語なんだと思う。しかし、決っしてファンタジーでは片付けられない現実の生きづらさも、しっかり捉えている作品だと思った。
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