松村文彦

PERFECT DAYSの松村文彦のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
役所広司さんの映画を観てきました。セリフがほとんど無い無口なトイレ清掃員の演技に感動しました。観た直後はもう少しアクセントが欲しかったですが、数日すると淡々と流れる日常の表現がこみ上げるように蘇ってきました。
印象に残ったシーンは二つ。
家出した姪っ子を迎えにきた妹が、施設に入った父親を見舞って欲しいと兄の役所さんに言うと、首を横に振る時の余りにも辛そうな表情。この表情から親との辛い確執があった事が窺い知れる。
もう一つは、ほのかな恋心を抱いたスナックのママの前夫と川縁で何年か振りのタバコを吸って、お互いむせ返る場面。スマートにタバコを燻らすのではなく、2人ともむせ返る事で仲間意識が芽生えるところが人間臭くて微笑ましくて良かった。
アパートに置いてあったカセットレコーダーが、高校生の時に親から買ってもらった物と一緒で妙に親しみを感じました。
役所さんが演じる日常生活から、どのような人生を歩んできたかを皆さんで考えてくださいというのが、監督のメッセージと理解しました。
万人に勧められる映画ではありませんが、こういう映画創りは素晴らしいと思いました。
松村文彦

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