まさやんぬ

PERFECT DAYSのまさやんぬのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

これはすごい!
人間讃歌だと思った。

冒頭、なんてことのない出勤前の朝の支度が延々と続き、あーこれは労働者の鬱々とした日常を描いているのだろうか、と思ったけれど、アパートを出た時に主人公・平山が一瞬見せる、なんとも言えない晴々とした、爽やかな表情に、妙に惹きつけられる。

公衆トイレの清掃員ということで、ついつい「なんでこの仕事をするに至ったのだろう」「どんな過酷な経歴があるのだろう」と、マイナスのストーリーを求めがちになるけど、そんな観客の邪推をさらりとかわして、自分の人生を楽しんでいる。

あまり多くが語られないので、かえって平山の経歴についてあれこれと想像してしまう。きっと実家は割と裕福で、きちんと教育も受けてきて、なんなら修士や博士の学位も持っているのかもしれない。清掃員の仕事は不本意ながら就いたのかもしれないが、彼の中に蓄積された教養によって、他人がどう言おうと、自分が良いと思ったものを信じられるし、自分の生き方を卑下しないのではないか、などと思ったのだが、どうだろう。
毎朝起きたら布団を畳むし、植物に水をやるし、寝る前には必ず本を読み、週末には洗濯に行って写真を現像し、新しい本を買って、居酒屋で飲む。そんな暮らしぶりの丁寧さはとても自然で、余裕すら感じられる。無理してるだとか取り繕ってるだとか、そんな様子がない。
よく見ればPERFECT DAYS だもんな、複数形、毎日がパーフェクトなんだ。人には人のパーフェクト。

教養で腹は満たされないけれど、教養って自分の軸を作ってくれて、人生を豊かにするよなぁ、などと思った。何も生み出さないちょっとした変化を大切にしたいな。