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PERFECT DAYSのRのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

時代背景を探る。
古い家、点滅する自販機(逆に珍しい)、カセット…昭和?
スカイツリーで現代、東京と分かる。
ツリーがやけに大きいと感じていたら、浅草駅が出てきて台東区と断定。
そういえば、ツナギの背中にThe Tokyo toiletと書かれているのだった。
世界的にまだスカイツリー=東京ではないから会社名にTokyoを入れた?
スカイツリーはこの映画に何度も登場する、地元の象徴。

主人公の台詞は極端に少ない。
名前がわかったのも中盤以降。
台詞が少ないからこそ笑顔が印象的◎
平日も土日もルーティンをこなす中で、
それでもゆっくりと確実に、世界は、人は、変わっていく。

行きつけのお店に行ったとき、「いらっしゃい」ではなく、「お帰りなさい」と言ってくれるの、何だか良い。

カセット。大昔のもの。
Spotifyにあるかな?
‥どうだろう。どこの店?


同じ世界にいるようで違う世界。
頬にキスをしてきた女の子の再登場はなく、同僚は会社を辞め、デラちゃんの世界からも去っていく。
自分の世界に新しい人が現れては消えていく。
自分が知る世界はあまりにも断片的だ。

今度っていつ?
今度は今度。今は今。


家出した姪を世話してたら、迎えに来た妹が「これ好きだったでしょ」とお菓子を渡す。
人が好きだった物を覚えてるって愛だなあ。

まだトイレ掃除やってるの?
平山さんの代わりに言うと、車を改造して自分で道具作って。プライド持って仕事こなしてます!
職業(見た目?)に対する偏見は、子を見つけた瞬間、平山さんと繋いでいた方の手をウエットティッシュで拭くシーンでも…

実の父親とはわだかまりがある。
姪や妹とハグしたあとに出た涙の意味?

5,6年スナックのママを応援しているということは、当時からルーティンを続けているのだろう。休みの日にフィルムを現像し、良く撮れた写真を1ヶ月ごとに詰めた缶の山。

床を擦る箒の音で目を覚ます。歯を磨き、植物に水を遣り、駐車場の自販機で買った缶コーヒーを一杯飲んでから、車を発車させる。
カセットをかけ、道中必ず見上げるスカイツリー。都内の公衆トイレを次々と磨き上げ、銭湯で汗を流し、本を読みながら眠りにつく。
休日は、日が昇ってから起床。コインランドリーへ行って、待機時間で写真を現像し、自宅で選別。自転車を走らせ決まった古本屋に寄り、スナックへ。
傍から見たらワンパターンでも、少しの違いが気付きを与え、思い出となっていく。
○×ゲームのメモのやりとり。カラートイレの近くに住む人。銭湯に浸かるときの心情。夜ごはんの店で案内される席。居合わせる人々。写真の撮れ高。手に取る本。店員さんの一言…

スナックのママが見知らぬ男と抱き合っているのを目撃し、動揺してコンビニで酒缶
3本とタバコを購入、隅田川沿いへ。
タバコ吸うの?と思ったら案の定咽せて、
見知らぬ男もやってきて二人で咽せるのおもしろかった。

影が重なったら濃くなるんでしょうか?
わからないことばかりで(人生は)終わるんだなあ
…やってみましょうか?

影と影を重ねる。
濃くなってますね
そうでもないような…
いや、濃くなっていますよ
その説主張しますね

影踏、童心に返るの良い。
変わらないなんてことはないんですよ…

最初の方の夢のシーン。
有形、無形、古い映画を思い出させるような
揺らぎの連続に現れる見開きのページ。
全体的にピントが合っていないのに、濃く浮かび上がる「影」の一文字。
そして影踏。影がこの映画のテーマなんだろうと思ったら。

エンドロール(服はユニクロとセオリーだけ?
ダイワハウスもあった)の最後に、『木漏れ日』が出てきて驚いた。
映画の始まりは夜景、次いで木だった。
いつもお昼を食べながら見上げる神社の木。
幸田文の小説のタイトルも木。他に出てきた本数冊は忘れてしまった。

「光と影が重なるのは今、その瞬間だけ」
木漏れ日の、陽が注いで葉が光に透ける感じが大好きだけれど、「光と影の重なる瞬間」という切り取り方は斬新だった。光があるから影がある。影と影の交錯。英訳を読む時間がなかったのが残念。

朝目覚め、空を見上げ、微笑む。
当たり前に思えてたくさん見過ごしてきた今、この瞬間が愛しくなる。そんな映画だった。
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