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PERFECT DAYSのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.5
ヴィム・ヴェンダース監督が、東京を舞台に、公衆トイレの清掃員として働く中年男性の日常を描いたヒューマン・ドラマ。
カンヌ国際映画祭男優賞、エキュメニカル審査員賞受賞。
原題:Perfect Days
(2023、125分)

東京スカイツリーのそばにある古びたアパートにひとりで暮らす寡黙な平山。
朝早く起きて、ワゴン車で渋谷の公衆トイレに向かい、清掃の仕事を終え、寝るまでの彼の毎日は、規則正しく流れている。
そんなある日、めいのニコが家出して押しかけてくる…。

~登場人物~
・平山(役所広司):寡黙で真面目なトイレ清掃員。ひとり暮らし。
※平山は小津安二郎監督の作品の何作かで笠智衆が演じた登場人物の名前。
・一緒に働く若い清掃員、タカシ(柄本時生)
・タカシが惚れ込み通っているガールズ・バーのアヤ(アオイヤマダ)
・姪=妹の娘、ニコ(中野有紗)
・妹、ケイコ(麻生祐未)
・居酒屋のママ(石川さゆり)
・その元夫、友山(三浦友和)
・居酒屋の常連客(あがた森魚、モロ師岡)
・ホームレスの老人(田中泯)

~平山が聴いている音楽(ロック)~
・The Animals - House of the Rising Sun/アニマルズ(朝日のあたる家)
・The Velvet Underground - Pale Blue Eyes/ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(ペイル・ブルー・アイズ)
・Otis Redding -(Sittin' On) The Dock of The Bay/オーティス・レディング(ドック・オブ・ベイ)
・Patti Smith - Redondo Beach/パティ・スミス(レドンド・ビーチ)
・The Rolling Stones - (Walkin' Thru The) Sleepy City/ローリング・ストーンズ(めざめぬ街)
・ Aoi sakana-Blue Fish/金延幸子 (青い魚)
・Lou Reed - Perfect Day/ルー・リード(パーフェクト・デイ)
・The Kinks - Sunny Afternoon/キンクス(サニー・アフタヌーン)
・The House of the Rising Sun(日本語バージョン)/浅川マキ(朝日のあたる家)→歌唱:石川さゆり、ギター伴奏:あがた森魚。
・ Van Morrison - Brown Eyed Girl/ヴァン・モリソン(ブラウン・アイド・ガール)
・Nina Simone - Feeling Good/ ニーナ・シモン(フィーリング・グッド)
(音楽の選曲について)
ロック・ファンには堪えられませんね。

~平山が持っている古本(文庫)~
・ウィリアム・フォークナー「野生の棕櫚」
・幸田文「木」
・パトリシア・ハイスミス「11の物語」

"霧吹きでの水やり"
"自販機の缶コーヒー"
"音楽のカセットテープ"
"小型フィルムカメラ"と"モノクロ写真"
"神社境内の樹"
"銭湯"
"浅草地下商店街の定食屋"
"行きつけの小さな居酒屋"
"木洩れ日"

「この世界は、ほんとはたくさんの世界がある。つながっているように見えても、つながっていない世界がある」

「ほんとにトイレ掃除してんの?」

「ビクターみたいになっちゃうかも」

役所広司が演じる主人公は、何らかの理由で父や妹が暮らしている裕福な世界(家庭)を捨てた男です。
姪のニコも主人公と同じようにその世界(家庭)から逃れてきますが、主人公は、自ら妹に電話して、姪を妹の元に戻してやります。
「パリ、テキサス」のトラビスと同じですね。
(主人公は、自分の世界で子ども(姪や息子)を一人前に育てることができないことを分かっています。)

相入れない世界のどちらを選んでも、孤独は消えない。
人は自らの道を自由に選べたとしても、何かを得れば、何かを失う。
ゲーテ曰く「人は生きている限り悩むものだ。」
(追記)
なお、役所広司と三浦友和による影についての会話だが、そもそも影が重なることはあり得ないので(もちろん濃くなることもない)、興ざめ。
→2人の会話全体が陳腐で、三浦友和の登場シーンは蛇足だと思う。
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